今回は、ポジティブ心理学についてがっつり解説します!
今回の記事を読むメリットは、
・ポジティブ心理学について理解できる
・フロー状態について理解できる
・ポジティブ思考との違いがわかる
です。
長い記事になると思いますが、読み終わったころにはポジティブ心理学について、マスターしていると思います。
キーワードは、
・ウェルビーイング
・ポジティブ感情
・フロー状態
・オプティミズム(楽観的)
・自己決定感
あたりかなと思います。
今回の記事はこちらの本を参考にしています。
それではいきましょう。
幸せになるには?
ポジティブ心理学と幸せはとても深い関係があります。
少しだけ、脱線して『幸せになるには?』というテーマで話を進めます。
幸せになる条件として、多くの人がお金についてあげるのではないでしょうか?
クイズ番組でも賞金を設定することでやる気を出させたり、宝くじで何億円当たる!というコマーシャルも多く、社会的に お金=幸せという考えは根付いていると思います
。
裕福な国は幸せか
結論:お金と幸福度の相関はありません
GDP(国内総生産というけど、国の裕福度とも表せます)と幸福度を調査した結果、ある程度豊かな国は、幸福度は一定以下にはなりませんが、貧しい国と比較して幸せであるという結果は出ていません。
また、日本も例外ではなく裕福であるのにも関わらず、幸福度は低い国の代表です。
私の考えでは、収入の格差が激しいことやモノがたくさんあるからこそ、迷って裕福になれないのではないかと考えています。
選択のジレンマとも言われていますが、メニューの多いラーメン屋よりもメニューが1つしかないラーメン屋の方が幸福度が高いと言われています。
上がいるからこそ全然満足できないと感じているのでしょう。
幸福感への注目
幸福感に注目することは世界的な傾向となっています。
物質的欲求が満たされてくる中で、人々の関心が物質的なものから精神的なものへ向かっていることを反映しているためと考えられます。
マズローの5段階欲求でも、上の方には承認欲求などの物質的な欲求ではないと考えられています。
その意味で、昔と比較すれば幸福という言葉の意味している内容の中から物質的な豊かという側面が薄れている。
つまり、周りは宝物で囲まれているのにありがたみが薄れて、そのことだけで人生が充実しているとは感じられなくなっているということです。
ありがたみが薄れてしまうことを、ヘドニック・トレッドミル現象と呼んでいます。
私たちは成功や裕福さに慣れてしまうので、それをそのまま維持してもはじめて手に入れたときのように幸せではなくなってしまいます。
同じような幸福レベルを維持しようとすれば、常にそのために走り続けなければなりません。
つまり、幸福を維持するには、それよりももっとお金を得て、ブランド品を買い漁るしかなくなってしまいます。
ポジティブ心理学とは
お待たせしました。ここで出てくるのが、ポジティブ心理学です。
ポジティブと聞くと、
と必ず言われます。
ポジティブ心理学とは、ポジティブな側面だけに注目して、ネガティブな部分や弱い部分があることを無視することではありません。
つまり、ただすべての事象に対して楽観的に考えるだけではないということです。
個人的には物質的ではなく精神的な面で幸福感を得るための、つまり幸せになるための思考法であると考えています。
ウェルビーイング
ウェルビーイング(well-being)という言葉は、日本ではあまりなじみがなく、日本語にピッタリの訳語がないということで、そのままカタカナで用いられています。
直訳では「健康、幸せ、幸福、福祉」などがあり、それらをすべて満たしている状態といえます。
このウェルビーイングの測定には、WHOの定義に基づけば、
身体的な状態・心理的な状態・社会的な状態をすべて網羅する必要がある。
とあり、人生や生活の質であるQOL(生活の質)とされているものに近いです。
このウェルビーイングがポジティブ心理学における幸せになります。
ポジティブ感情
感情には怒り、嫌悪、恐怖、悲しみ、驚き、喜びの六種類が基本感情であるとされています。
ポジティブ感情は、この中の喜びにあたるものです。
ポジティブ感情の多くのものは社会的感情であり、ほかの感情と異なる特徴があまり明確でなかったり刺激に対して自動的に生まれるというよりは自分で解釈していることに近いです。
極端に言うと、ポジティブ感情は意図的に生み出していることになります。
ネガティブ感情の役割
ポジティブ感情にだけ焦点を当てましたが、ネガティブな感情にも重要な役割があります。
ネガティブ感情は、感情の中の怒り、嫌悪、恐怖、悲しみにあたります。
ネガティブ感情は危機的な状況に対応するという意味で、「逃走・攻撃」と適応に際してはっきりした役割を持っています。
怒りという感情は攻撃行動に結びつき、恐れという感情は逃走行動に結びついています。
ネガティブ感情は、その感情がその個体や種の生存に対してどのように役立つか、という位置づけがはっきりしています。
長い目で見るとポジティブ感情も種の生存に役立ちますが、土壇場ではネガティブ感情が強まります。
フロー状態
夢中になっていると、時間も忘れて集中してしまいますよね。
その行動をしているときは、今していることに対して客観的に評価せず、あとから振り返ると楽しかったという経験があります。
このような経験をフロー状態もしくは最適経験やゾーンとも呼ばれます。
自分が自分の行動のすべてをコントロールし、自分の運命を支配しているという感覚になります。
また、この経験をした人に調査をしたところ流れるような感覚に陥ったことから、flow(流れ)という名前が付けられたのだといいます。
スポーツ・音楽でのフロー状態
試合に集中して自分の全力を出しているとき、無意識的に体が動いたりとんでもないプレーを連発することがあります。
音楽でも、演奏中にノッてくると、お客さんよりも楽しんでしまうことがあるといいます。そんな演奏者を見るとこちらも楽しくなってきますよね。
どちらも初心者では不可能で、技術の身についている上級者になりやすいと言われています。
ゲームでのフロー状態
スポーツや音楽はある程度の技術があって初めてたどり着ける境地として、フロー状態の解説がありますが、携帯型のゲームは簡単に入ることができます。
それは、技術と難易度が丁度いいからだと言われています。
ゲームが最初から上級者向けでは、楽しくもありませんし続けることもありません。
ゲームを作る側はどうやって、時間を忘れて楽しんでもらえるかを考える必要がありますね。
ちなみに、バイクでの暴走でもフロー状態は生まれ、ゲームやバイクでの暴走の周りから賞賛されることの少ないフローを『ジャンク・フロー』といいます。
社会的に受けれられる活動であるかという違いです。
うまくフロー状態を活かした、仕事選びをするといいですね。
フロー状態の3つの条件
フロー状態に入るために3つの条件があります。
挑戦
自分にできるかできないか微妙なところにあるものに挑戦するときにフロー状態に入りやすいといいます。
限界を大きく超えるようなものには、不安を感じ、自分が余裕でできるところであれば退屈を感じ、挑戦という条件には合いません。
スポーツなどでも、同じくらいもしくは少し上の力量の相手だとハラハラした試合展開に集中してしまいます。
すぐにフィードバックがある
フローは、一度の挑戦ではなく連続して挑戦し続けていくことにより、自分が成長していくプロセスの感覚でもあります。
そのため、フィードバックに応じて調整して、成し遂げようと挑戦していくという経験を支えるものになります。
身近な例で言うと、テストや社内コンペの結果は一週間後くらいにわかるので取り組みますが、50年後に実がなる木を植えても、あまり育てることに意欲が湧きませんよね。(良い例が浮かびませんでした)
自分の主観的なフィードバックではなかなか比較ができないのでフロー状態にはつながりにくいと言われています。
ですので、すぐ適切なフィードバックが来るような目標に変更して取り組むことがフロー状態には大事です。
自己決定感
やる気の科学という記事でも取り上げましたが、外発的動機(お金や賞状など他人から与えられるもの)をモチベーションにするよりも内発的動機(自分の楽しみや喜びなどの内から出るもの)をモチベーションに取り組む方が、自己決定感が生まれます。
この自己決定感もフロー状態には重要です。
また、この自己決定感では結果がうまくいかなくてもその行動自体を楽しむため、落ち込むことは少なくなります。
フロー状態の特徴
- その瞬間に行っていることへの極めて限定した集中
- 行っている行為と意識の融合
- 自分を見ているという自意識の喪失(客観性がなくなる)
- 自分の行為のしっかりとしたコントロール感
- 時間感覚の歪曲
- その経験の自己目的感
外部から自分をモニターするセルフモニタリングの感覚が薄れてしまいます。
行為の融合という表現もそれを指しており、その別の側面として自分を見ているという自意識が失われることが生じます。
意識は普段は自分の活動を適切に調整するために必要な機能です。
それは、絶え間なく感覚や思考、意欲などすべての情報を収集し、その情報の重要性を判断していて必要な情報を貯蔵したり引き出したりするものです。
したがって、何か仕事をしていても約束の時間に遅れなかったり、複数の作業を並行して行うことができるのもこの意識のおかげです。
フロー状態になるとすべての意識は自分の行っている行動に向けられてしまうために、注意の資源が不足して、結果的に自分自身の状態をモニターすることができなくなります。
また時間経過の感覚も十分に働かず、それがほとんど役に立たなくなるという現象が生じてしまいます。
[番外編]やる気を出させる自己決定感について
フロー状態に入る条件として自己決定感をあげました。
あなたが会社の社長なら、社員にやる気を出させるにはどうしますか?
私なら給料さえ上げれば、やる気を出してくれるだろうと考えてしまいます。
ですが、先ほどの話では外発的動機ではフロー状態に入れません。また、仕事に対する楽しみを感じることがなくなるなど、マイナスな面ばかりです。
つまり、給料を上げるほど給料のために働いている、もしくは高い給料によって働かされているという自分で行動を決めるということがなくなるため結果として生産性が下がってしまいます。
確かに給料が上がることによって、やる気は出ますが裕福であることと幸福には相関がないことは冒頭でも述べました。
「給料アップのジレンマ」ともいえるのではないでしょうか。
やる気を出させたいなら、その人にとって限界のギリギリの仕事を与えることで仕事に対するやりがいを感じさせることがよいかもしれません。
ですが、このご時世パワハラや時間外労働にも繋がりブラック企業のレッテルが張られてしまいます。
ギリギリの仕事を与え、フロー状態に入らせつつその生産性の向上により、給料が上がるというステップがあると、自分で働きお金を稼いでいるという自己決定感を得ることができます。
仕事を行う理由は、お金のためだけではなくやりがいもあるということを経営者は考えなければなりませんね。
仕事(学生にとっては勉強)はストレスそのものであり、こころの病の原因であるという考えがこのジレンマの根底にありそうですね。
お金のためだけに働いていると思うな!
オプティミズム(楽観的)
ポジティブ心理学と言えば楽観主義という印象がありますね。
ポジティブ感情と少しかぶるところがありますが、ご了承ください。
どんなことが起きても、前向き!みたいな感じですが、正直ずっとはきついです。
ポジティブ心理学におけるオプティミズムはウェルビーイングが達成することが可能であるということです。
最善な行動は、現状を受け入れつつ目標に向けて前向きに努力を続けることですね。
もっといえば、分析的で実証的に考えて次への行動を考慮することから判断すると、堅実な人が多いとも言えます。
ネガティブ感情での解説でも、論理的に考えるとあったためポジティブ心理学におけるオプティミズムには悲観性も含みます。
楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に行動せよ。
by KDDI創業者 稲盛 和夫
オプティミストの自信
特性として楽観的な人、つまりオプティミスト(楽観主義者)はこれから自分にいいことが起こると予測する人たちです。
これに対してペシミスト(悲観主義者)は悪いことが起こると予測する人たちで、オプティミストは単になんとなると幸運を期待しているだけではない。
オプティミストは行動の結果生じる将来の価値を高く見積もるので、行動に対するモチベーションが高くなります。よって、困難なことであっても挑戦していくことが多いです。
また、健康心理学の記事で紹介した価値×期待論で考えると、オプティミストは期待がとても大きいことからモチベーションがとても高くなります。
ペシミストとオプティミストの捉え方
オプティミストは、不幸な出来事に対しては、より一時的・特殊的・外的に考えやすく、良いことに対しては永続的・普遍的・内的に考えやすい傾向にあります。
ペシミストは、不幸な出来事について永続的・普遍的・内的に考えやすく、良い出来事については一時的・特殊的・外的に考えてしまうのです。
オプティミズムへの批判
楽観的な人間は判断力が低く、現実的ではないという指摘がよくあります。
単に世界の解釈をゆがめているだけだとか、自分の満足のために無理に思い込もうとしているだけだ、と批判されるのである。
だれでもほかの人が病気になっても自分はなりにくいとリスク評価したり、自分は平均以上であるという楽観的な評価をする傾向にあります。
これを楽観的なバイアス、ポジティブ・イリュージョンといわれます。
賭け事などでこのポジティブ・イリュージョンは悪い方向に働いてしまいます。
テストで例にとると、赤点を取ったとして
と考える学生は成績の向上は見込めません。成績を上げるには
と論理的に考えることが必要になります。
オプティミズムはいい面だけを捉えるようなものではありません。論理的である必要があります。
まとめ
・ポジティブ心理学は前向きに考えるだけで、全ての問題を解決する魔法のような考え方ではない
・現在は物質的ではなく、精神的な幸せが求められている。
・ウェルビーイングとは「健康、幸せ、幸福、福祉」のすべてを満たそうとすることであり、ポジティブ心理学の目標としている。
・フロー状態に入る条件は、①挑戦②すぐにフィードバック③自己決定感 が必要になる。
・ポジティブ心理学におけるオプティミズムはただ前向きに考えるだけでなく、論理的に目標まで設計する必要がある。
最後に
最後まで読まれた方、お疲れさまでした。
少し読みにくい順番になっていたら、すいません。
ポジティブ心理学は、幸せになるための有効な考え方です。
ぜひやってみてください。
最後まで本当にお疲れさまでした。