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この記事を読むメリット
・この記事を読むことで,\(e^{x} \sin x\)の微分や,\(\log |cos x|\)などの微分ができるようになります。
・例題を自身で解くことによって,計算能力の向上と公式の定着化を図ります。
・エンジニア系(工学系)の分野で必要となる数学の基礎力が身に付き,エンジニアとして,キャリアアップが図れるでしょう。
前回の記事を読んでいない方は,前回の記事を読んでから来るといいと思います。
微分の定義
忘れてはいけませんが,微分は,常に微分の定義が基礎となっています。微分の定義式は,
$$\frac{d}{dx}f(x)=\displaystyle \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h)-f(x)}{h}\tag{1}$$
で表されています。今から紹介する微分の公式の全ては,この微分の定義から成り立っています。
三角関数の微分
三角関数の微分は,交流電流が流れる回路の定常状態を記述するときに,用いられます。
具体例をだすと,ファラデーの法則です。
ファラデーの電磁誘導の法則に基づいた,コイルの自己誘導
$$V(t)=-L\frac{d}{dt}I(t)$$
\(I(t)\)は,送電,配電の際に,正弦波の電流を用います。ここで,三角関数の微分公式が火を吹くというわけです。
三角関数の微分公式
\(\sin x\)の微分\(\frac{d}{dx}\sin x\)は,
$$\frac{d}{dx}sin x= \cos x\tag{1}$$
\(\cos x\)の微分\(\frac{d}{dx}\cos x\)は,
$$\frac{d}{dx}cos x=- \sin x\tag{2}$$
\(\tan x\)の微分\(\frac{d}{dx}\tan x\)は,
$$\frac{d}{dx}tan x=\frac{1}{cos^2 x}\tag{3}$$
三角関数の微分例題8問
例題1:
(1) \(y=4\sin x\)を微分した関数\(\frac{dy}{dx}\)を求めましょう。
(2) \(y=6\cos \frac{1}{6}x\)を微分した関数\(\frac{d}{dx}y\)を求めましょう。
(3) \(y=3\sin 5x +7\cos 5x\)を微分した関数\(\frac{d}{dx}y\)を求めましょう。
(4) \(y=4 \sin^2 x \)を微分した関数\(\frac{dy}{dx}\)を求めましょう。
(5) \(y=\tan 2x\)を微分した関数\(\frac{dy}{dx}\)を求めましょう。
(6) \(y=\frac{1}{\tan^2 3x}\)を微分した関数\(\frac{dy}{dx}\)を求めましょう。
(7) \(y=4\tan 2x \cos 2x\)を微分した関数\(\frac{dy}{dx}\)を求めましょう。
(8) \(y=\tan 10x \cos 5x\)を微分した関数\(\frac{dy}{dx}\)を求めましょう。
例題1(1)解答:
微分の公式を使って、
\(\frac{dy}{dx}=4\cos x\)
<終>
例題1(2)解答:
\(u=\frac{1}{6}x\)と置くと,\(\frac{du}{dx}=\frac{1}{6}\)となります。ここで,
関数\(y\)は,
\(y=6\cos u\)
より,置換積分の公式
\(\frac{dy}{dx}=\frac{dy}{du}\frac{du}{dx}\)
を使うと,
\(\frac{dy}{dx}=\cancel{6}\cos u \frac{1}{\cancel{6}}\)
よって,
\(\frac{dy}{dx}=\cos \frac{1}{6} x\)
<終>
例題1(3)解答:
\(u=5x\)とおくと,\(\frac{du}{dx}=5\),
置換積分の公式を使うと,
\(\frac{dy}{dx}=\frac{dy}{du}\frac{du}{dx}= 3\sin u \frac{du}{dx}+7\cos u \frac{du}{dx}\)
\(\frac{dy}{dx}=3・5\sin u+7・5\cos u\)
よって,\(\frac{dy}{dx}\)は,
\(\frac{dy}{dx}=15\sin 5x+35\cos 5x\)
例題1(4)解答:
\(u=\sin x\)と置くと,\(\frac{du}{dx}=\cos x\)
\(y\)は,\(u\)を使って表すと,
\(y=4 u^2\)で,\(\frac{dy}{du}=8 u\)
\(\frac{dy}{dx}\)は,
\(\frac{dy}{dx}=\frac{dy}{du}\frac{du}{dx}=8 u\cos x\)
よって,
\(\frac{dy}{dx}=8 \sin x cos x=4\sin 2x\)
<終>
\(\sin^2 x\)は,\(\sin x\)の0.5倍の周波数を持っていることがわかりました。
例題1(5)解答:
\(u=2x\)と置くと,\(\frac{du}{dx}=2\)。
\(y\)を\(u\)を使って表すと,
\(y=tan u\)となり,\(\frac{dy}{du}\)は,
\(\frac{dy}{du}=\frac{1}{cos^2 u}\)
となります。よって,\(\frac{dy}{dx}\)は,
\(\frac{dy}{dx}=\frac{dy}{du}\frac{du}{dx}=2\frac{1}{\cos^2 u}=2\frac{1}{\cos^{2}2x}\)
<終>
例題1(6)解答:
\(u=tan 3x\)と置きます。すると,\(\frac{du}{dx}\)は,
\(\frac{du}{dx}=3\frac{1}{\cos^{2} 3x}\)
\(y\)を\(u\)を使って表すと,
\(y=\frac{1}{u^2}=u^{-2}\)
\(\frac{dy}{du}\)は,
\(\frac{dy}{du}=-2u^{-3}\)
\(\frac{dy}{dx}=\frac{dy}{du}\frac{du}{dx}=-2u^{-3}3\frac{1}{\cos^{2} 3x}\)
よって,\(\frac{dy}{dx}\)は,
\(\frac{dy}{dx}=-6\frac{1}{\tan^{3} 3x \cos^{2} 3x}=-6\frac{1}{\sin 3x \tan x}\)
<終>
例題1(7)解答:
三角関数の相互関係式を使えば簡単に解けますが,ここでは,関数の積の微分公式を使って解きます。
\(f(x)=\tan 2x\),\(g(x)=\cos 2x\)と置くと,\(f’(x)=2\frac{1}{\cos^2 2x}\),\(g’(x)=-2\sin 2x\)
\(\frac{dy}{dx}=4(f’(x)g(x)+f(x)g’(x))=4(2\frac{1}{\cos^2 2x}\cos 2x+\tan 2x(-2\sin 2x))\)
\(\frac{dy}{dx}=8(\frac{1}{\cos 2x}-\frac{\sin^{2} 2x}{\cos 2x})=\frac{2}{\cos 2x}(1-\sin^{2} 2x)\)
よって,
\(\frac{dy}{dx}=8cos 2x\)
<終>
例題1(8)解答:
\(f(x)=\tan 10x\),\(g(x)=\cos 5x\)と置くと,\(f’(x)=10\frac{1}{\cos^{2} 10x}\),\(g’(x)=-5\sin 5x\)となります。
ここで,\(\frac{dy}{dx}\)は,
\(\frac{dy}{dx}=f’(x)g(x)+f(x)g’(x)=10\frac{1}{\cos^2 10x}\cos 5x+\tan 10x(-5\sin 5x)\)
\(\frac{dy}{dx}=\frac{10\cos 5x}{\cos^{2} 10x}-5\sin 5x \tan 10x\)
<終>

指数関数と対数関数の微分法

指数関数の微分法は,制御工学と電気回路が融合した分野で見かけます。制御は,\(e^{-at}\)のような電流信号や電圧信号が結構出てきます。
指数関数と対数関数の微分公式
指数関数\(e^x\)の微分は,
$$(e^x)’=e^x\tag{4}$$
対数関数\(log |x|\)の微分は,
$$(log |x|)’=\frac{1}{|x|}\tag{5}$$
で表されます。
例題7問
例題2:
(1) \(y=e^{-x^2}\)を微分した関数\(\frac{dy}{dx}\)を求めましょう。
(2) \(y=\frac{1}{5}log |x^5|\)を微分した関数\(\frac{dy}{dx}\)を求めましょう。
(3) \(y=\frac{1}{4}e^{log |4x|}\)を微分した関数\(\frac{dy}{dx}\)を求めましょう。
(4) \(y=3log e^{\frac{1}{2}x}\)を微分した関数\(\frac{dy}{dx}\)を求めましょう。
(5) \(y=e^{x}\sin x\)を微分した関数\(\frac{dy}{dx}\)を求めましょう。
(6) \(y=log |\cos 3x|\)を微分した関数\(\frac{dy}{dx}\)を求めましょう。
(7) \(y=e^{2x}log |tan 2x|\)を求めましょう。
例題2(1)解答:
\(\frac{dy}{dx}=-2xe^{-x^2}\)
<終>
例題2(2)解答:
\(y\)について,対数関数の性質を使うと,
\(y=\frac{1}{\cancel{5}}\cancel{5}log |x|=log |x|\)
よって,\(\frac{dy}{dx}\)は,
\(\frac{dy}{dx}=\frac{1}{|x|}\)
<終>
例題2(3)解答:
\(y\)について,指数関数と対数関数の性質を使うと,
\(y=\frac{1}{4}|4x|=|x|\)
よって,\(\frac{dy}{dx}\)は,
\(\frac{dy}{dx}=1\)
<終>
例題2(4)解答:
\(y\)について,指数関数と対数関数の性質を使うと,
\(y=3\frac{1}{2}|x|\)
となります。よって,\(\frac{dy}{dx}\)は,
\(\frac{dy}{dx}=\frac{3}{2}\)
<終>
例題2(5)解答:
\(f(x)=f’(x)=e^x\),\(g(x)=sin x\),\(g’(x)=cos x\)なので,\(\frac{dy}{dx}\)は,
\(\frac{dy}{dx}=f’(x)g(x)+f(x)g’(x)=e^{x}(\sin x+\cos x)\)
<終>
例題2(6)解答:
合成関数の微分法を使います。
\(\frac{dy}{dx}=(log| \cos 3x|)’=(log |u|)’(|\cos 3x|)’=\frac{1}{|u|}|-3\sin 3x|=|\frac{-3\sin 3x}{\cos 3x}|\)
よって,
\(\frac{dy}{dx}=|-3\tan 3x|\)
<終>
例題2(7)解答:
まず,\(y\)について,対数関数の性質を使うと,
\(y=e^{2x}(log|\sin 2x|-log|\cos 2x|)=e^{2x}log|\sin 2x|-e^{2x}log|\cos 2x|\)
合成関数の微分法と,積の微分公式を使います。
\(\frac{dy}{dx}=(e^{2x})’log |\sin 2x|+e^{2x}(log |\sin 2x|)’-(e^{2x})’log|cos 2x|-e^{2x}(\log|\cos 2x|)’\)
\(=e^{2x}(2\log|\sin 2x|+2\frac{|\cos 2x|}{|\sin 2x|}-2\log|\cos 2x|-2|\frac{-\sin 2x}{\cos 2x}|)\)
\(=2e^{2x}(\log|\sin 2x|-\log|\cos 2x|+\frac{1}{\tan 2x}-\tan 2x)\)
よって,\(\frac{dy}{dx}\)は,
\(\frac{dy}{dx}=2e^{x}(\log|\tan 2x|+\frac{1}{\tan 2x}-\tan 2x)\)
<終>

双曲線関数の微分法

双曲線関数は,電線のたるみやたわみを表すときに用いられています。双曲線関数を微分することによって,電線のたるみ具合を計算こともできます。
双曲線関数の微分公式
ここからは,高校では習わない関数の微分公式を紹介します。
3つの双曲線関数は,次式で定義されています。
$$sinh x=\frac{e^x-e^{-x}}{2}$$
$$cosh x=\frac{e^x+e^{-x}}{2}$$
$$tanh x=\frac{\sinh x}{\cosh x}$$
3つの双曲線関数は,次式で表されます。
$$(sinh x)’=\cosh x\tag{6}$$
$$(cosh x)’=\sinh x\tag{7}$$
$$(tanh x)’=\frac{1}{\cosh^2 x}\tag{8}$$
三角関数の微分と似ていますね。オイラーの公式をご存じの人は,双曲線関数の\(x\)を\(ix\)に変えると,三角関数に変身することがわかると思います。
例題5問
例題3:
(1) \(y=\sinh(3x+8)\)を微分した関数\(\frac{dy}{dx}\)を求めましょう。
(2) \(y=\cosh(\sin 2x)\)を微分した関数\(\frac{dy}{dx}\)を求めましょう。
(3) \(y=\tanh \sqrt{x}\)を微分した関数\(\frac{dy}{dx}\)を求めましょう。
(4) \(y=\frac{e^{2x}-1}{e^{x}+e^{-x}}\)を微分した関数\(\frac{dy}{dx}\)を求めましょう。
(5) \(y=\sin(3x+2)\log|\cosh 2x|\)を微分した関数\(\frac{dy}{dx}\)を求めましょう。
例題3(1)解答:
\(\frac{dy}{dx}=(\sinh(3x+8))’=(\sinh(u))’(3x+8)’=3\cosh(3x+8)\)
<終>

例題3(2)解答:
\(\frac{dy}{dx}=(\cosh(\sin 2x))’=(\cosh u)’(\sin 2x)’=2(\sinh 2x)(\cos 2x)\)
<終>
例題3(3)解答:
\(\frac{dy}{dx}=(\tanh\sqrt{x})’=(\tanh u)’(\sqrt{x})’=\frac{1}{2\sqrt{x}}\frac{1}{\cosh^2 2x}\)
<終>
例題3(4)解答:
\(y\)を変形すると,
\(y=e^{x}\frac{e^x-e^{-x}}{e^x+e^{-x}}=e^{x}(\tanh x)\)
\(\frac{dy}{dx}=e^{x}(\tanh x+(\tanh x)’)=e^{x}(\tanh x+\frac{1}{\cosh^2 x})\)
<終>
例題3(5)解答:
\(\frac{dy}{dx}=(sin(3x+2))’\log|\cosh 2x|+\sin(3x+2)(\log|\cosh 2x|)’\)
\(=3\cos(3x+2)\log|\cosh 2x|+\sin(3x+2)|2\frac{\sinh 2x}{\cosh 2x}|\)
\(=3\cos(3x+2)\log|\cosh 2x|+2\sin(3x+2)\tanh 2x\)
<終>

まとめ
1.三角関数の微分
$$(sin x)’=cos x$$
$$(\cos x)’=-\sin x$$
$$(\tan x)’=\frac{1}{\cos^2 x}$$
2.指数関数と対数関数の微分
$$(e^x)’=e^x$$
$$(log x)’=\frac{1}{x}$$
3.双曲線関数の微分
$$(\sinh x)’=\cosh x$$
$$(\cosh x)’=\sinh x$$
$$(\tanh x)’=\frac{1}{\cosh^2 x}$$
最後に
三角関数,指数関数の微分は,電気回路学で結構出てきます。とくに,コンデンサやインダクタといった素子が含まれる回路には,電圧や電流の方程式に微分項が含まれます。この方程式を解くときに,微分の知識が生かされます。