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今回は,電場(電界)についてのお話です。
電界\(E\)の定義
原点に電荷\(Q_1\)を置いたときの点\((x,y,z)\)における電界\(E\)は次式で表されます。
$$E=\frac{Q_1}{4\pi \varepsilon |r|^3}r=\frac{Q_1}{4\pi \varepsilon \sqrt{x^2+y^2+z^2}^{3}}(x,y,z)\tag{1}$$
電荷:\(Q_1\)[C]
位置:\(r\)[m]
誘電率:\(\varepsilon\)[F/m]
電界:\(E\)[V/m]
図1.原点に電荷\(Q_1\)を置いたときの電界\(E\)
電界の性質
電界の性質
1.プラスの電荷は外向きに電界を作る
2.マイナスの電荷は内向きに電界を作る
3.電界の大きさは電荷の距離の逆二乗に比例する
図2.\(+Q\)における電界の分布(左図),\(-Q\)における電界の分布(右図)
例題1
例題1解答:
電界の定義式より
\(E=\frac{Q_1}{4\pi \varepsilon|r|^3}r\)
ここで,題意から\(r=(x,0,0)\),\(|r|=x^2\)なので,
\(E=\frac{Q_1}{4\pi \varepsilon \sqrt{x^2}^3}(x,0,0)=\frac{Q_1}{4\pi \varepsilon x^2}(1,0,0)\)
電界の定義式の拡張
式(1)だと,
電荷を原点にしかおけなくなってしまい使いづらいので,公式を拡張しましょう。
点\((x’,y’,z’)\)に電荷\(Q_1\)を置いたときの点\((x,y,z)\)における電界\(E\)は次式で表されます。
$$E=\frac{Q_1}{4\pi \varepsilon |r-r’|^3}(r-r’)$$
\(=\frac{Q_1}{4\pi \varepsilon \sqrt{(x-x’)^2+(y-y’)^2+(z-z’)^2}^{3}}(x-x’,y-y’,z-z’)\tag{2}\)
電荷:\(Q_1\)[C]
位置:\(r\)[m]
誘電率:\(\varepsilon\)[F/m]
電界:\(E\)[V/m]
図3.点\((x’,y’,z’)\)に電荷\(Q_1\)を置いたときの電界\(E\)
式(2)は一見文字が多くて複雑そうに見えますが,実は,式(1)と同じことを主張しています。
\(r\)ベクトルを\(r’\)だけ平行移動させると,下の図4のようになります。
図4.点\((0,0,0)\)に電荷\(Q_1\)を置いたときの電界\(E\)
また,式(2)の\((x’,y’,z’)=(0,0,0)\)とすれば,式(1)と一致しているので,式(2)は式(1)の拡張版と言うことも出来ます。
例題2
例題2:以下の図のように,点\(1,-1\)に電荷\(Q_1\)をおいたとき,点\((2,0)\)における電界\(E\)を求めましょう。ただし,誘電率は\(\varepsilon\)とします。
例題2解答:
式(2)から,電界\(E\)は
\( E=\frac{Q_1}{4\pi \varepsilon |r-r’|^3}(r-r’)\)
ここで,\(r-r’=(1,1)\),\(|r-r’|=\sqrt{1^2+1^2}=\sqrt{2}\)より,
\(E=\frac{Q_1}{4\pi \varepsilon \sqrt{2}^3}(1,1,0)=\frac{Q_1}{8\pi\varepsilon}(\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{\sqrt{2}},0)\)
となります。
<終>
電界の重ね合わせ
電界は重ね合わせが成立することが知られています。
$$E=E_1+E_2$$
\(Q_1\)と\(Q_2\)が作る電界:\(E\)[V/m]
\(Q_1\)が作る電界\(E_1\)[V/m]
\(Q_2\)が作る電界\(E_2\)[V/m]
図4.電界\(E_1\)と電界\(E_2\)の重ね合わせ
例題3
図(1) \(x\)軸上で,電界の強さが0になる点を求めよ。
(2) 点\((0,2)\)の電界\(E\)[V/m]を求めよ。
例題3解答:
(1)解答:
電界が0になる点を\((x,0)\)と置くと,
\((x,0)\)における電界\(E\)は次のように表されます。
\(E=\frac{Q}{4\pi \varepsilon \sqrt{(x+1)^2}^3}(x+1,0)+ \frac{-4Q}{4\pi \varepsilon \sqrt{(x-4)^2}^3}(x-4,0)\)
ただし,\(x\)が存在しうる範囲は,\(x<-6,4<x\)
\(=\frac{Q}{4\pi\varepsilon}(\frac{1}{(x+1)^2}(1,0)+\frac{-4}{(x-4)^2})(x-4,0)=0\)
\(y\)方向の電界は0なので,\(x\)方向のみを考えると,
\(\frac{1}{(x+1)^2}-\frac{4}{(x-4)^2}=0\)
\((x-4)^2=4(x+1)^2\)
\((x-4)=\pm 2(x+1)\)
\(x \mp 2x=4\pm 2\)
よって,
\(x=\frac{2}{3},-6\)
しかし,\(x\)の存在しうる範囲は,\(x<-6,4<x\)だったので,
\(x=-6\)
<終>
(2)解答:
点\((0,2)\)における電界\(E\)は次のように表されます。
\(E=\frac{Q}{4\pi \varepsilon \sqrt{1^2+2^2}^3}(1,2)+\frac{-4Q}{4\pi\varepsilon \sqrt{(-4)^2+2^2}^3}(-4,2)\)
共通項をくくると,
\(E=\frac{Q}{4\pi \varepsilon}(\frac{1}{\sqrt{5}^3})(1,2)+\frac{-4}{\sqrt{\sqrt{20}^3}}(-4,2))\)
\(E=\frac{Q}{4\pi \varepsilon}(\frac{1}{5\sqrt{5}}(1,\cancel{2})-\frac{1}{5\sqrt{5}}(-4,\cancel{2}))\)
\(E=\frac{Q}{4\pi \varepsilon}(\frac{1}{\cancel{5}\sqrt{5}}(\cancel{5},0))\)
よって,\(E\)は,
\(E=\frac{Q}{4\sqrt{5}\pi\varepsilon}(1,0)\)
関連問題
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まとめ
$$E=\frac{Q_1}{4\pi \varepsilon |r-r’|^3}(r-r’)$$
$$=\frac{Q_1}{4\pi \epsilon \sqrt{(x-x’)^2+(y-y’)^2+(z-z’)^2}^{3}}(x-x’,y-y’,z-z’)\tag{2}$$
電界の重ね合わせ
最後に
工学部の電気系の人たちは,このようにベクトル演算を数多くこなしています。
ですから,そこら辺の資格(電気主任技術者試験,技術士,国家公務員試験)程度の電磁気学の問題は簡単に解けます。
そこで,私は,大学に行かない人でも,本サイトを通じて,電磁気学でベクトル演算ができるようになって欲しいと思い,執筆に至りました。
ぜひ参考になればと思います。