大学の線積分の例題が欲しい?だったら,解答付きで渡します。どうも,ユキです。今日は,電磁気学,流体力学,力学などで用いられる大学数学,ベクトル線積分の例題を用意しました。この記事を通じて,ベクトル線積分の計算のやり方を身につけて欲しいです。
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1.電磁気学において,与えられた電界(電場)から電位を導くことが出来るようになります。
2.ベクトル線積分の解き方がわかるようになります。
3.電磁気学で必要な計算能力が身につきます。
電場と電位の関係はベクトル線積分?
高校物理の教科書では,電場(電界)と電位の関係は
$$V=Ed$$
とされています。
しかし,この定義では,一様な電界のときしか電位を出すことはできません。
そこで,電磁気学という分野でこの公式をパワーアップした公式がこちらになります。
$$V_{A \to B}=-\int_{A}^{B}E・dr\tag{1}$$
です。
ということで,電界と電位の線績分を使った例題を2題用意しました。
ベクトル線積分:例題1
\(xy\)で表される座標平面上に,電界\(E=(y^2-2x)i_x+2xy i_y\)で与えられています。このとき,点\(O(0,0)\)と,\(B(2,2)\)の電位差\( V_{(0,0)\to (2,2)}\)を
(1) 経路\(c_2\)に従って計算しましょう。
(2) 経路\(c_1\)に従って計算しましょう。
(3) この系の電荷に働く力は,保存場でしょうか?
例題1(1)解答例
電位差\( V_{(0,0)\to (2,2)}\)について,
\( V_{(0,0)\to (2,2)}=-\int_{(0,0)}^{(2,2)}E・dr\)
\( V_{(0,0)\to (2,2)}\)をもとめたいので,下準備をします。
<準備>
\(xy\)平面におけるベクトル\(r\)について,
\(r=xi_x+yi_y\tag{1}\)
\(r\)は経路\(c_2\)上にあり,\(r\)を\(t\)\((0\leq t\leq1)\)を用いて表します。
\(c_2\):\(r(t)=2ti_x+2ti_y\tag{2}\)
\(\frac{dr(t)}{dt}=2i_x+2i_y\)
続いて,\(E\)を\(t\)を用いて表します。(1)=(2)から,\(x=2t\),\(y=2t\)となるので,
\(E(t)=((2t)^2-2(2t))i_x+(2(2t)(2t))i_y=(4t^2-4t)i_x+8t^2i_y\)
<準備完了>
ここで,\( V_{(0,0)\to (2,2)}\)について,
\(V_{(0,0)\to (2,2)}=-\int_{(0,0)}^{(2,2)}E・dr=-\int_{0}^{1}E(t)・\frac{dr(t)}{dt}dt\)
と変形できますから,<準備>で求めた\(E(t)\)と\(\frac{dr}{dt}\)を代入します。
\( V_{(0,0)\to (2,2)}=-\int_{0}^{1}{(4t^2-4t)i_x+8t^2i_y}・(2i_x+2i_y)dt\)
ここで,\(i_x・i_x=i_y・i_y=1\),\(i_y・i_x=i_x・i_y=0\)より,
\( V_{(0,0)\to (2,2)}=-\int_{0}^{1}(8t^2-8t)+16t^2\)
\( V_{(0,0)\to (2,2)}=-\int_{0}^{1}24t^2-8t\)
\( V_{(0,0)\to (2,2)}=-[8t^3-4t^2]_{0}^{1}=-[8-4]=-4\)V
<終>
例題1(2)解答例
電位差\( V_{(0,0)\to (2,2)}\)について,
(1) \( V_{(0,0)\to (2,0)}\)について,
\( V_{(0,0)\to (2,0)}=-\int_{(0,0)}^{(2,0)}E・dr\)
\( V_{(0,0)\to (2,0)}\)をもとめたいので,下準備をします。
<準備>
\((0,0)\to (2,0)\)間の位置ベクトルは,\(t(0 \leq t \leq 1)\)を用いて,
\(r(t)=xi_x+yi_y=2ti_x\)
\(\frac{dr(t)}{dt}=2i_x\)
続いて,\(E\)を\(t\)を用いて表します。\(x=2t\),\(y=0\)より,
\(E(t)=(0-2(2t))i_x+(2(2t)(0))i_y=-4ti_x\)
<準備完了>
ここで,\( V_{(0,0)\to (2,0)}\)について,
\(V_{(0,0)\to (2,0)}=-\int_{(0,0)}^{(2,0)}E・dr=-\int_{0}^{1}E(t)・\frac{dr(t)}{dt}dt\)
と変形できますから,<準備>で求めた\(E(t)\)と\(\frac{dr}{dt}\)を代入します。
\( V_{(0,0)\to (2,0)}=-\int_{0}^{1}{-4ti_x}・(2i_x)dt\)
ここで,\(i_x・i_x=1\)より,
\( V_{(0,0)\to (2,0)}=-\int_{0}^{1}-8tdt\)
\( V_{(0,0)\to (2,0)}=-[-4t^2]_{0}^{1}=-[-4]=4\)V
<終>
(2) \( V_{(2,0)\to (2,2)}\)について,
\( V_{(2,0)\to (2,2)}=-\int_{(2,0)}^{(2,2)}E・dr\)
\( V_{(2,0)\to (2,2)}\)をもとめたいので,下準備をします。
<準備>
\((2,0)\to (2,2)\)間の位置ベクトルは,\(t(0 \leq t \leq 1)\)を用いて,
\(r(t)=xi_x+yi_y=2i_x+2ti_y\)
\(\frac{dr(t)}{dt}=2i_y\)
続いて,\(E\)を\(t\)を用いて表します。\(x=2\),\(y=2t\)より,
\(E(t)=((2t)^2-2(2))i_x+(2(2t)(2))i_y=(4t^2-4)i_x+8t\)
<準備完了>
ここで,\( V_{(2,0)\to (2,2)}\)について,
\(V_{(2,0)\to (2,2)}=-\int_{(2,0)}^{(2,2)}E・dr=-\int_{0}^{1}E(t)・\frac{dr(t)}{dt}dt\)
と変形できますから,<準備>で求めた\(E(t)\)と\(\frac{dr}{dt}\)を代入します。
\( V_{(2,0)\to (2,2)}=-\int_{0}^{1}{(4t^2-4)i_x+8ti_y}・(2i_y)dt\)
ここで,\(i_x・i_x=i_y・i_y=1\),\(i_x・i_y=i_y・i_x=0\)より,
\( V_{(2,0)\to (2,2)}=-\int_{0}^{1}16t dt\)
\( V_{(2,0)\to (2,2)}=-[8t^2]_{0}^{1}=-[8]=-8\)V
<終>
(1),(2)より,\(V_{(0,0)\to (2,2)}\)は,
\(V_{(0,0)\to(2,2)}=V_{(0,0)\to (2,0)}+V_{(2,0)\to (2,2)}=4-8=-4\)V
例題1(3)解答例
経路\(c_1\)で計算した電位差は,-4V
経路\(c_2\)で計算した電位差は,-4V
よって,保存場
<終>
ベクトル線積分:例題2
\(xy\)で表される座標平面上に,電界\(E=(x-4y)i_x-4 i_y\)[V/m]で与えられています。このとき,点\(O(0,0)\)と,\(B(2,1)\)の電位差\( V_{(0,0)\to (2,1)}\)を
(1) 経路\(c_1\)に従って計算しましょう。
(2) 経路\(c_2\)に従って計算しましょう。
(3) この系の電荷に働く力は,保存場でしょうか。
例題2(1)解答例
\( V_{(0,0)\to (2,1)}\)について,
\( V_{(0,0)\to (2,1)}=-\int_{(0,0)}^{(2,1)}E・dr\)
\( V_{(0,0)\to (2,1)}\)をもとめたいので,下準備をします。
<準備>
経路\(c_1\)は,\(y=\frac{x^2}{4}\)が成立している。\((0,0)\to (2,1)\)間の位置ベクトルは,\(t(0 \leq t \leq 1)\)を用いて,
\(c_1\):\(r(t)=xi_x+\frac{x^2}{4}i_y=2ti_x+t^2i_y\)
\(\frac{dr(t)}{dt}=2i_x+2ti_y\)
続いて,\(E\)を\(t\)を用いて表します。\(x=2t\),\(y=t^2\)より,
\(E(t)=(2t-4t^2)i_x-8t i_y=(4t^2-4)i_x-8ti_y\)
<準備完了>
ここで,\( V_{(0,0)\to (2,1)}\)について,
\(V_{(0,0)\to (2,1)}=-\int_{(0,0)}^{(2,1)}E・dr=-\int_{0}^{1}E(t)・\frac{dr(t)}{dt}dt\)
と変形できますから,<準備>で求めた\(E(t)\)と\(\frac{dr}{dt}\)を代入します。
\( V_{(0,0)\to (2,1)}=-\int_{0}^{1}{(2t-4t^2)i_x-8ti_y}・(2i_x+2ti_y)dt\)
ここで,\(i_x・i_x=i_y・i_y=1\),\(i_x・i_y=i_y・i_x=0\)より,
\( V_{(0,0)\to (2,1)}=-\int_{0}^{1}(4t-8t^2)-16t^2 dt\)
\(V_{(0,0)\to (2,1)}=-\int_{0}^{1}(4t-24t^2)dt\)
\( V_{(0,0)\to (2,1)}=-[2t^2-8t^3]_{0}^{1}=-[-6]=6\)V
例題2(2)解答例
\( V_{(0,0)\to (2,1)}\)について,
\( V_{(0,0)\to (2,1)}=-\int_{(0,0)}^{(2,1)}E・dr\)
\( V_{(0,0)\to (2,1)}\)をもとめたいので,下準備をします。
<準備>
経路\(c_2\)は,\(y={x}{2}\)が成立している。\((0,0)\to (2,1)\)間の位置ベクトルは,\(t(0 \leq t \leq 1)\)を用いて,
\(c_1\):\(r(t)=xi_x+\frac{x}{2}i_y=2ti_x+ti_y\)
\(\frac{dr(t)}{dt}=2i_x+i_y\)
続いて,\(E\)を\(t\)を用いて表します。\(x=2t\),\(y=t\)より,
\(E(t)=(2t-4t)i_x-8t i_y=(2t-4t)i_x-8t i_y\)
<準備完了>
ここで,\( V_{(0,0)\to (2,1)}\)について,
\(V_{(0,0)\to (2,1)}=-\int_{(0,0)}^{(2,1)}E・dr=-\int_{0}^{1}E(t)・\frac{dr(t)}{dt}dt\)
と変形できますから,<準備>で求めた\(E(t)\)と\(\frac{dr}{dt}\)を代入します。
\( V_{(0,0)\to (2,1)}=-\int_{0}^{1}{(2t-4t)i_x-8ti_y}・(2i_x+i_y)dt\)
ここで,\(i_x・i_x=i_y・i_y=1\),\(i_x・i_y=i_y・i_x=0\)より,
\( V_{(0,0)\to (2,1)}=-\int_{0}^{1}(4t-8t)-8t dt\)
\(V_{(0,0)\to (2,1)}=-\int_{0}^{1}-12t dt\)
\( V_{(0,0)\to (2,1)}=[6t^2]_{0}^{1}=6\)V
例題2(3)解答例
経路\(c_1\)で計算した電位差は,6V
経路\(c_2\)で計算した電位差は,6V
よって,保存場。
ベクトル線積分を使って保存場判別
保存場とは,エネルギー保存則が成立しているベクトル場のことをいいます。
具体例を出すと,電場(電界)と重力場です。
電界\(E\)が保存場であるということを数式で表すと,
$$\oint_{C}E・dr=0\tag{2}$$
となります。
例題1や例題2は,式(2)を満たしているのでしょうか?
\(\oint_{C}E・dr=\oint_{c_1 -c_2}E・dr=\oint_{c_1}E・dr-\oint_{c_2}E・dr\)
(1) 例題1の場合,
\(\oint_{c_1}E・dr-\oint_{c_2}E・dr =-4+4=0\)
(2) 例題2の場合
\(\oint_{c_1}E・dr-\oint_{c_2}E・dr =6-6=0\)
これで,例題1,例題2の電界は,確かに式(2)を満たすことがわかりました。
でも,実は,もっと簡単に保存場であることを確かめる方法があります。
保存場であれば,以下の式(3)は成立します。
$$∇\times E=0\tag{3}$$
\(∇\times E\)が0かどうかを計算するだけで,保存場かどうかを判別することが可能です。
式(3)は,式(2)の微分形です。逆に,式(2)は,式(3)の積分形と呼ばれています。
ベクトル線積分:まとめ
1.直交座標の位置ベクトル\(r\)は,大きさ1の単位ベクトル\(i_x,i_y,i_z\)を用いて,
$$r=xi_x+yi_y+zi_z$$
と表せる。
2.同じ方向を向いた単位ベクトルの内積は1
$$i_x・i_x=|i_x|^2=1$$
$$i_y・i_y=|i_y|^2=1$$
3.直交する単位ベクトルの内積は0
$$i_x・i_y=i_y・i_x=0$$
4.ベクトル線積分の置換積分
\(0 \leq t\leq 1\)とすると,
$$\int_{A}^{B}E・dr=\int_{0}^{1}E(t)・\frac{dr}{dt}dt$$
と置き換え可能。
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最後に
ベクトル線積分の記事は,途中計算が長くなるので,誰も書かない傾向にあるけれど,
電磁気学を本気で理解する為には,簡単なベクトル線積分くらいはできて置かねばならないと思い,執筆に至りました。私の悪い癖です。