この記事を読むメリット
☑磁束密度に関するガウスの法則
ガウスの法則とは?
ガウスの法則は,ある閉曲面\(S\)に関する法則でした。
以下の記事では,電界・電束密度に関するガウスの法則について説明しています。
そして,これらの記事で得られたガウスの法則の結論は,
電界\(E\),閉曲面\(S\),閉曲面内部の電荷を\(Q\)とすると,
$$\oint_{S}E・ndS=\frac{Q}{\varepsilon}$$
この式は,電気力線の本数が\(\frac{Q}{\varepsilon_0}\)本であることを意味しています。
もしくは,電束密度\(D\)、閉局面\(S\),閉曲面内部の電荷を\(Q\)とすると,
$$\oint_{S}D・ndS=Q$$
と表現されました。
物理法則の式の意味は,右辺によって左辺が生じます。
どういうこと?
電束密度に関するガウスの法則を見ると,
$$\underbrace{\oint_{S}D・ndS}_{面Sから出て行く電束密度}=\underbrace{Q}_{内部電荷の合計} $$
となっており,電束密度\(D\)が閉曲面\(S\)を出て行く現象は,内部電荷\(Q\)によって引き起こされているということが言えます。
さて,序章はこれくらいにして,
磁束密度\(B\)に関するガウスの法則のお話をしていきましょう。
磁束密度に関するガウスの法則
磁束密度\(B\)に関するガウスの法則は次のように書けます。
$$\oint_{S}B・ndS=0$$
なんと,右辺が0になりました。
これは,磁束密度\(B\)が閉曲面\(S\)を出て行く現象を引き起こすものは存在しない。
という意味になります!!!
ん?どういうこと?
もう少し,イメージしやすい説明をすると,
・磁束密度\(B\)は必ずループ状になっている
・S極だけ,N極だけの磁石は存在しない
ということが言えます。
さて,電界\(E\),電束密度\(D\),磁束密度\(B\)に関するガウスの法則について説明しましたので,磁界\(H\)に関するガウスの法則について考えていきましょう。
と,言いたいところですが,
磁界\(H\)に関するガウスの法則は,存在しません。
磁界\(H\)は,\(H=\frac{B}{\mu})\)なので,
磁界\(H\)に関するガウスの法則が存在しそうな気がします。
例えば,磁界\(H\)にベクトル面積分を適用してみると,
\(\oint_{S}H・ndS\)
となります。この積分値は,\(H=\frac{B}{\mu_0}\)を考慮すると,0になりそうな気がしますが,0になりません。
磁界\(H\)の面積分の値が0にならない原因として,ヒステリシス現象が考えられます。
数学的に言い換えると,\(\mu\)が\(H\)に依存する関数。すなわち,\(\mu(H)\)ということです。
磁束密度に関するガウスの法則・微分形
これから,磁束密度\(B\)に関するガウスの法則の微分形を紹介します。
結論から言うと,
$$∇・B=0$$
となります。\(∇\)(ナブラ)は,「ベクトル解析学」で出てくる微分演算子の一種です。
この式は,\(\oint_{S}B・ndS=0\)にガウスの発散定理を適用することで導出できます。
ちなみに,電束密度\(D\)に関するガウスの法則の微分形は,電荷密度\(\pho\)を用いて,
$$∇・D=\rho$$
となります。
ちなみに,磁束密度に関するガウスの法則と電束密度に関するガウスの法則は,4つのマクスウェルの法則の内の2つとして知られています。
磁束密度に関するガウスの法則|まとめ
電束密度\(D\)に関するガウスの法則―積分形
$$\oint_{S}D・ndS=Q$$
磁束密度\(B\)に関するガウスの法則―積分形
$$\oint_{S}B・ndS=0$$
電束密度に関するガウスの法則―微分形
$$∇・D=\rho$$
磁束密度に関するガウスの法則―微分形
$$∇・B=0$$
電束密度\(D\)の放出は,電荷\(Q\)によって引き起こされる
磁束密度\(B\)の放出源は存在しない。
最後に
磁束密度に関するガウスの法則は,電束密度のガウスの法則に比べて,あまり使われませんが,単一の磁極が存在しない事を示しています。
単一の磁極しかもたない磁石を発見すればノーベル賞を取れると言われて,はや10年にして,磁束密度に関するガウスの法則によって現実を突きつけられました。