今回は,人狼ゲームは偶数人である方が人狼にとって都合が良いのかどうか検証します。
村の人口が偶数人の方が,人狼が勝つ確率は高い?
ここでは人狼が1人の場合について考えています。前回の記事を読んでおくとわかりやすいかもしれません。
https://cupuasu.club/werewolf-probably-theory1/
検証方法
1 村の人口を奇数(\(2k-1\))人として人狼が勝つ確率\(P_{2k-1}\)を求めます
2 \((2k-1)\)人より1人多い場合の人狼が勝つ確率\(P_{2k}\)を求めます
3 2つの確率の大小関係を比較する。すなわち,
\(P_{2k-1}<P_{2k}\)
この不等式を示します
検証
ステップ1. \(P_{2k-1}\)を求めましょう。
村の人口が奇数人の場合は,前回の記事で求めています->
ので,\(P_{2k-1}\)は,
\(P_{2k-1}=\frac{(n-1)!!}{(n)!!}=\frac{(n-1)(n-3)(n-5)・\cdots・2}{n(n-2)(n-4)・\cdots・3}\)
\(n=2k-1\)を代入すると,\(P_{2k-1}\)は,
\(P_{2k-1}=\frac{(2k-2)!!}{(2k-1)!!}=\frac{(2k-2)(2k-4)(2k-6)・\cdots・2}{(2k-1)(2k-3)(2k-5)・\cdots・3}\)
ちなみに,「!!」という謎のマークは2重階乗といいます。
次に,ステップ2 \(P_{2k}\)を求めましょう。
村の人口が偶数人の場合も前回の記事で求めています->
ので,
\(P_{2k}=2\frac{(2k-1)!!}{(2k)!!}=\frac{(2k-1)(2k-3)(2k-5)・\cdots・3}{2k(2k-2)(2k-4)・\cdots・4}\)
となります。
ステップ3 \(P_{2k}\)と\(P_{2k-1}\)の大小関係を比較します。
\(P_{2k-1}<P_{2k}\)のような不等式を示す方法は,3つあります。
1.なんとかして\(P_{2k-1}<P_{2k}\)を示す
2.\(P_{2k-1}-P_{2k}<0\)と変形して示す
3.\(\frac{P_{2k-1}}{P_{2k}}<1\)を示す <-1番目の式の両辺を\(P_{2k}\)で割った
この場合であれば,1番目の方法でも出来ますが,文字数が多くなりそうなので,三番目の
方法で不等式を導きます。
\(\frac{P_{2k-1}}{P_{2k}}\)について式変形を施して,その値が1未満であることを示し
ます。
\(\frac{P_{2k-1}}{P_{2k}}=\frac{\frac{(2k-2)(2k-4)(2k-6)\cdots・2}{(2k-1)(2k-3)(2k-5)・\cdots・3}}{\frac{(2k-1)(2k-3)(2k-5)・\cdots・3}{2k(2k-2)(2k-4)・\cdots・4}}\)
\(=\frac{(2k-2)(2k-4)(2k-6)・\cdots・2 \times 2k(2k-2)(2k-4)・\cdots・4}{(2k-1)^2(2k-3)^2(2k-5)^2・\cdots・3^2}\)
ここで,ちょっとした工夫をします。
\(=\frac{2k(2k-2)}{(2k-1)^2}\frac{(2k-2)(2k-4)}{(2k-3)^3}\frac{(2k-4)(2k-6)}{(2k-5)^2}\cdots \frac{4・6}{5^2} \frac{2・4}{3^2}<1\)
です。納得いかないでしょうか? これは,\(\frac{2・4}{3^2}\),\(\frac{4・6}{5^2}\)のように,分数式の1つ1つが1より小さいということに気づけば,その総乗は,1より小さいということがわかります。では,\(\frac{2k(2k-2)}{(2k-1)^2}<1\)ということがわかりますか?
わからない人はこの記事を参考にしてください。
結局,
\(\frac{P_{2k-1}}{P_{2k}}<1\)
が示すことができたので,\(P_{2k-1}<{P_{2k}}\)が成立します。
\(P_{2k-1}<P_{2k+2}\)は常に成り立つのか
とりあえず,村の人口が3人,村の人口が6人である場合の人狼が勝つ確率をそれぞれ計算してみます。
\(k=2\)の場合を試します。
\(P_{3}\)は,3人の場合の人狼ゲームなので,
\(P_{3}=\frac{2}{3}\)
で大丈夫です。
次に,\(P_6\)について,先ほど用いた公式を使うと
\(P_{6}=2 \times \frac{5!!}{6!!}=2・\frac{5}{6}\frac{3}{4}\frac{1}{2}=\frac{5}{8}\)
\(P_{3}>P_{6}\)となりました。
よって,\( P_{2k-1}<P_{2k+2}\)は常に成立するわけではない。
実際に計算
人狼が1人のときの,人狼が勝つ確率を奇数と偶数に分けて計算してみました。計算方法は,
\(2k-1\)人村のとき | \(2k\)人村のとき | |
\(k=2\)のとき | 0.667 | 0.75 |
\(k=3\)のとき | 0.533 | 0.625 |
\(k=4\)のとき | 0.457 | 0.547 |
\(k=5\)のとき | 0.406 | 0.492 |
\(k=6\)のとき | 0.369 | 0.451 |
なるほど,確かに偶数人のときの方が人狼が有利です。
また,人狼が9人のときよりも,人狼が12人のときの方が,人狼が勝つ確率が高いと言うことがみてとれます。
まとめ
・村の中に人狼が1人の場合,人狼が勝つ確率は,
村の人口が奇数人のときより,(奇数+1)人のときの方が多い
・村の中に人狼が1人の場合,人狼が勝つ確率は,
村の人口が奇数人のときより,(奇数+3)人のときの方が必ず多いとは限らない。
・9人村より12人村の方が人狼が勝つ確率は高い
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最後に
人狼ゲームは,複雑な確率モデルをしていて,現在の段階では人狼が勝つ確率は,近似式としてしかわかっていません。
人狼は話術のゲームですので,どれだけ確率を求めてもしょうがない気もしますが,一つの参考にしてください。
これから,人狼ゲームの確率モデルについて解剖していこうと思います。