今日はギャラドス変換についてじゃなかった,ラプラス変換について述べていこうと思います。
この記事を読むメリット
☑ラプラス変換の役割を知る
☑ラプラス変換表を搭載
☑線形微分方程式の解法を学べる
ラプラス変換の役割
ラプラス変換は次式で定義される関数の変換のことをいいます。
ラプラス変換の定義:\(\mathcal{L}(s)\)を\(f(t)\)をラプラス変換した関数とすると,
$$\mathcal{L}(s)=\int_{0}^{\infty} f(t)e^{-st}dt\tag{1}$$
ラプラス変換の大きな特徴は,微分方程式を代数方程式に変換できることです。
代数方程式は,私たちは中学校でもうすでに学習しています。例を挙げると,
\(s^2+5s+6=0\),\(s+3=0\)
このように\(t\)のべきと実数で構成される方程式のことを代数方程式と言います。
微分方程式は,大学で本格的に学習します。例を挙げると,
\(\frac{d^2}{dt^2}y+5\frac{d}{dt}y+6y=0\),\(\frac{d}{dt}y+3y=0\),\(x^2\frac{d}{dt}y+2xy=0\)
などです。このように,微分で構成される方程式のことを微分方程式といいます。
また,逆に積分のみで構成される積分方程式というものもあります。
ラプラス変換表
\(f(t)\) | \(\mathcal{L}(s)\) |
1 | \(\frac{1}{s}\) |
\(t^n\) | \(\frac{(n-1)!}{s^n}\) |
\(e^{-st}\) | \(\frac{1}{s+a}\) |
\(\sin \omega t\) | \(\frac{\omega}{s^2+\omega^2}\) |
\(\cos \omega t\) | \(\frac{s}{s^2+\omega^2}\) |
\(f(t-a)\) | \(\frac{(n-1)!}{s^n}e^{-as}\mathcal{L}(s)\) |
\((t-a)^n\) | \(\frac{(n-1)!}{s^n}e^{-as}\) |
\(e^{at}f(t)\) | \(F(s-a)\) |
\(\frac{d}{dt}f(t)\) | \(s\mathcal{L}(s)-f(0)\) |
\(\int_{0}^{t}f(t)dt\) | \(\frac{1}{s}\mathcal{L}(s)\) |
\(e^{-at}\sin \omega t\) | \(\frac{\omega}{(s-a)^2+\omega^2}\) |
\(e^{-at}\cos \omega t\) | \(\frac{s-a}{(s-a)^2+\omega^2}\) |
\(\frac{d^n}{dt^n}f(t)\) | \(\frac{(n-1)!}{s^n}\mathcal{L}(s)+\sum_{k=1}^{n-1}(k-1)!\frac{d^{k-1}}{dt^{k-1}}f(0)\) |
微分方程式をラプラス変換して解く
先ほど上げた2つの定数係数の微分方程式をラプラス変換してみましょう。
例題1:
\(\frac{d}{dt}y+3y=1\)
をラプラス変換を用いて,\(y\)について解きましょう。ただし,\(f(0)=0\)とし,\(y\)のラプラス変換を\(\mathcal{L}(s)\)とします。
例題1解答->
ラプラス変換表から,\(\frac{d}{dt}y+3y=1\)の両辺をラプラス変換すると
\(s\mathcal{L}(s)-f(0)+3\mathcal{L}(s)=\frac{1}{s}\)
\((s+3)\mathcal{L}(s)=\frac{1}{s}\) \(∵ f(0)=0\)
\(\mathcal{L}(s)=\frac{1}{s(s+3)}\)
両辺を逆ラプラス変換すれば,\(y\)について解くことができます。しかし,このままでは,右辺を逆ラプラス変換できません。なので,ラプラス変換を使う前に,部分分数分解をつかいます。
\(\mathcal{L}(s)=\frac{1}{3}(\frac{1}{s}-\frac{1}{s+3})\)
両辺を逆ラプラス変換すると,
\(y=\frac{1}{3}(1-e^{-3t})\)
です。
<終>
ただし,\(y\)は\(t<0\)では0である想定なので,保険をかけたい人は
\(y=\frac{1}{3}(1-e^{-3t})u(t)\)
としてください。ちなみに\(u(t)\)は単位ステップ関数といって,\(t<0\)のとき0で,\(t\geq 0\)のとき1をとる関数です。
例題2:
\(\frac{d^2}{dt^2}y+5\frac{d}{dt}y+6y=6\)をラプラス変換して,\(y\)について解きましょう。\(\frac{d}{dt}f(0)=0=f(0)=0\)とします。
例題2解答->
ラプラス変換表から,両辺をラプラス変換すると,
\((s^2-sf(0)-\frac{d}{dt}f(0))\mathcal{L}(s)+5(s+f(0))\mathcal{L}(s)+6\mathcal{L}(s)=6\frac{1}{s}\)
\(\frac{d}{dt}f(0)=0=f(0)=0\)を代入して整理すると,
\((s^2+5s+6)\mathcal{L}(s)=6\frac{1}{s}\)
\(\mathcal{L}(s)=6\frac{1}{s(s^2+5s+6)}\)
\(\mathcal{L}(s)=6\frac{1}{s(s+2)(s+3)}\)
ここで,両辺を逆ラプラス変換すると,\(y\)について解けますが,この問題も右辺をすんなりと逆ラプラス変換させてくれません。なので,部分分数分解を使うと,
\(\mathcal{L}(s)=6(\frac{1}{6}\frac{1}{s}-\frac{1}{2}\frac{1}{s+2}+\frac{1}{3}\frac{1}{s+3})\)
両辺を逆ラプラス変換すると,
\(y=6(\frac{1}{6}1-\frac{1}{2}e^{-2t}+\frac{1}{3}e^{-3t})\)
よって,
\(y=1-3e^{-2t}+2e^{-3t}\)
<終>
微分方程式の検算方法
例題2の解答があっているのかどうか自信が無いので,検算します。
検算方法は至ってシンプル。\(y\)に解を代入するだけです。
代数方程式と同じ検算方法ですね。
\(y\)を微分して,代入する準備をします。
\(\frac{d}{dt}y=6e^{-2t}-6e^{-3t}\)
\(\frac{d^2}{dt^2}y=-12e^{-2t}+18e^{-3t}\)
そして,\(\frac{d^2}{dt^2}y+5\frac{d}{dt}y+6y=6\)に代入します。
\(-12e^{-2t}+18e^{-3t}+5(6e^{-2t}-6e^{-3t})+6(1-3e^{-2t}+2e^{-3t})\)
\(-12e^{-2t}+18^{-3t}+30e^{-2t}-30e^{-3t}+6-18e^{2t}+12e^{-3t}=6\)
\(6=6\)
等号が成立したので,\(1-3e^{-2t}+2e^{-3t}\)は解であることが確かめられました。
ラプラス変換を使う学問
過渡状態の物質の状態を表すことが求められる学問は,ラプラス変換を使えます。
ここでいう過渡状態とは,古い状態から新しい状態へ移り変わっている状態のことを意味します。
具体的な学問の例として,「制御」に関する学問や,「電気回路」,「メカトロニクス」などがあげられます。
最後に
ラプラス変換に似たものとして,フーリエ変換やZ変換というものがあります。
Z変換は,ディジタル制御に出てきます。学生の身からすると,こんなものを勉強したところで誰の役に立って,どんな付加価値を産むのかわからないので,勉強するモチベーションがわきません。私の場合は,学問の面白さを探究することが勉強するにモチベーションになっています。