この記事を読むメリット
・公式を忘れたとしても,思い出すきっかけを作ります
・実際に公式を問題に応用させることが出来るようになります。
[空間ベクトル]s+t+u=1の公式の導出
三次元空間の点Pは,\(\overrightarrow{OA},\overrightarrow{OB},\overrightarrow{OC}\)の3つのベクトルを使って表すことが出来ます。
$$\overrightarrow{OP}=s\overrightarrow{OA}+t\overrightarrow{OB}+u\overrightarrow{OC}\tag{1}$$
では,点Pが二次元平面OAB上にある場合について考えると
$$\overrightarrow{OP}=s\overrightarrow{OA}+t\overrightarrow{OB}\tag{2}$$
このように書きます。平面OAB上に点Pが存在するので,平面OABから出て行く向きの\(\overrightarrow{OC}\)を\(u=0\)とすることによって,止めてあげました。
更に,点Pが一次元直線OA上にある場合は
$$\overrightarrow{OP}=s\overrightarrow{OA}\tag{3}$$
と書きます。先ほど同様,直線OAからはみ出すベクトル\(\overrightarrow{b}\)を止めました。
(1)~(3)の式を並べてみましょう。
$$\overrightarrow{OP}=s\overrightarrow{OA}\tag{3}$$
二次元
$$\overrightarrow{OP}=s\overrightarrow{OA}+t\overrightarrow{OB}\tag{2}$$
三次元
$$\overrightarrow{OP}=s\overrightarrow{OA}+t\overrightarrow{OB}+u\overrightarrow{OC}\tag{1}$$
このことから,ベクトルの数と次元の数は一致していることがわかります。
ということは,平面ABCは,二次元なので,平面ABC上の点Pは2つのベクトルで表すことが出来るはずです!
でも,平面ABCを表す点Pの式は,ベクトルが3つあるように見えます。
<div class=”simple-box3″><p>$$\overrightarrow{OP}=s\overrightarrow{OA}+t\overrightarrow{OB}+u\overrightarrow{OC}\tag{4}$$
ただし,\(s+t+u=1\)</p></div>
\(s+t+u=1\)の制約がどうも怪しいですね。
では,平面ABC上の点Pを2つのベクトルで表してみましょう。
平面ABC上の点Pを表すベクトル\(\overrightarrow{OP}\)の導出
平面ABC上の点Pを2つのベクトルで表すと,
$$\overrightarrow{CP}=s\overrightarrow{CA}+t\overrightarrow{CB}$$
です。式(2)のOをCに変えただけです。
この式から,式(4)を導きます。
まず,左辺に\(\overrightarrow{OC}\)を足します。
(左辺)\(= \overrightarrow{OC}+\overrightarrow{CP}=\overrightarrow{OP}\)
次に,右辺に\(\overrightarrow{OC}\)を足します。
(右辺)\(=\overrightarrow{OC}+s\overrightarrow{CA}+t\overrightarrow{CB}\)
ベクトルの基準をOとすると,
(右辺)\(=s(\overrightarrow{OA}-\overrightarrow{OC})+t(\overrightarrow{OB}-\overrightarrow{OC})+\overrightarrow{OC}\)
整理すると,
(右辺)\(= s\overrightarrow{OA}+t\overrightarrow{OB}+(1-s-t) \overrightarrow{OC}\)
となります。
ここで,\(1-s-t=u\)とすると,\(s+t+u=1\)が言えて,(左辺=右辺)より
$$\overrightarrow{OP}=s\overrightarrow{OA}+t\overrightarrow{OB}+ (1-s-t)\overrightarrow{OC}\tag{4}$$
となって,式(4)が成立します。
<終>
発展1:直線ODと平面ABCで交わる点Pについて
今,私たちはOからPへ向かうベクトルの求め方を2つ学習しました。
1つは,式(4)
$$\overrightarrow{OP}=s\overrightarrow{OA}+t\overrightarrow{OB}+ (1-s-t)\overrightarrow{OC}\tag{4}$$
もう1つは,式(3)
$$\overrightarrow{OP}=k\overrightarrow{OD}\tag{3}$$
です。
式(3)と式(4)は,どちらも同じベクトルなので,
\(\overrightarrow{OA},\overrightarrow{OB},\overrightarrow{OC}\)について係数比較することができます。係数比較をすると,方程式が3つ出てきます。そして,変数も\(s,t,k\)の3つなので,変数\(s,t,k\)の値を求めることが可能です。
実際に,大学入試問題でも,ベクトル\(\overrightarrow{OA},\overrightarrow{OB},\overrightarrow{OC}\)の係数比較を使った問題は,よく出てきます。
発展2:直線CDと平面ABCで交わる点Pについて
さっきと異なり,問題が変化球になりましたが,こちらも発展1と同様に,OからPへ向かうベクトルを2通り考えることで対処できます。
1つは,式(4)
$$\overrightarrow{OP}=s\overrightarrow{OA}+t\overrightarrow{OB}+ (1-s-t)\overrightarrow{OC}\tag{4}$$
で,もう1つは自力で作成します。
とりあえず,
\(\overrightarrow{CP}=k\overrightarrow{CD}\tag{3’}\)
が使いたいなぁ😉
と思ってください。
では,\(\overrightarrow{OP}\)をベクトルの回り道を使うと,
\(\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{OC}+\overrightarrow{CP}\)
式(3’)が使えそうですね!
代入すると,
\(\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{OC}+s\overrightarrow{CD}\tag{5}\)
となって,結局OからPへ向かう2つのパターンは,
$$\overrightarrow{OP}=s\overrightarrow{OA}+t\overrightarrow{OB}+ (1-s-t)\overrightarrow{OC}\tag{4}$$
\(\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{OC}+s\overrightarrow{CD}\tag{5}\)
であることがわかりました。これも先ほど同様に,係数比較をして,変数\(s,t,k\)の値を求めて,\(\overrightarrow{OP}\)を求めます。
[空間ベクトル]s+t+u=1:演習問題
こちらの記事は,\(s+t+u=1\)が使われている大学入試問題です。
問題は2問あって,解説も用意していますのでご活用ください。
s+t+u=1の公式の導出:まとめ
二次元平面ABC上の点\(P\)は,
$$\overrightarrow{CP}=s\overrightarrow{CA}+t\overrightarrow{CB}$$
と表すことができて,式変形すると,
$$\overrightarrow{OP}=s\overrightarrow{OA}+t\overrightarrow{OB}+u\overrightarrow{OC}$$
が導ける。
最後に
空間ベクトルは,下手に図を書くよりも,図を書かずに立式して,式変形をした方が早く解けます。また,ベクトルの応用問題は,パターンが少ないことで定評があるので,ほぼ全てのパターンを網羅しておくと良いと思います。