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ポートフォリオ理論とは?リスク最小化問題を数学で解く

ユキ
ユキ
リスクの少ない資産を築きたい。どうも,ユキです。

結構前は預金が好きでしたが,今は株,債券に興味があります。

そんな私が,リスクのない投資を始めるに当たって勉強した数学の理論こそ,今回紹介するポートフォリオ理論です。

この記事を読むメリット
☑ポートフォリオ理論とは何かについて分かる。
☑分散投資がなぜ大事なのかを数式で理解できる
☑分散投資の本質を理解できる。

投資に使われるポートフォリオ理論とは?

今回の記事では,長期投資で負けない為の資産配分を考えていきます。

株,債券,REIT,ETFなどの金融商品を1年以上保有し続ける投資戦術です。

長期投資の魅力は,預金よりも期待利回り(年利)が高くなる点です。

しかも,デイトレード,スイングトレードのような短期投資に比べて圧倒的にリスクが低いことが特徴です。

とはいえ,元本割れのリスクは0ではありませんので,多くの人は,投資を前に行動を踏み出せない方が多いのではないでしょうか?

 

ポートフォリオ理論は,そんなリスクをなるべく抑えようという狙いで生まれた理論です。

 

卵は一つのカゴに盛るな」という投資の格言通り,株,債券,不動産など様々な資産に分散投資することで,資産のリスクを別の資産のリスクで補うことができます。

 

ここで,「リスク」の意味について確認します。

普段,私達が使っている「リスク」という言葉は,「危険」,「危機」というニュアンスで使われていますが,

投資では,「リスク」は「分散\(\sigma^2\)」を意味します。「分散」は,標準偏差\(\sigma\)を2乗したものです。

 

つまり,「リスク」は,「不運に見舞われる可能性」と「幸運に見舞われる可能性」という意味になります。

そして,ポートフォリオ理論では,「リスク」を最小限に抑えることが目的となっています。

ポートフォリオ理論でリスクを最小化するためには?

ポートフォリオ理論でリスク\(\sigma^2\)を最小化するにはどうすれば良いのでしょうか?

 

その答えは,ズバリ連立方程式を解くだけです!(大学数学を使わないといけません。)

 

連立方程式の難易度は,現役理系大学生でも苦戦するレベルです。(統計学+微分積分学を使うので難しい)

 

それでは早速,その方程式を見ていきましょう。

 

2つの資産のリスクを最小化したい

話を簡単にするために,2つの資産のリスク\(\sigma^2\)を最小化する問題を考えましょう。

2つの資産(資産1と資産2)の期待収益率をそれぞれ,\(m_1,m_2\)とし,2つの資産に分散投資した新たな資産の期待収益率を\(m\)とおくと,

$$m=m_1x_1+m_2x_2$$

$$x_1+x_2=1$$

が成立します。仮に,\(x_1=0\)とすれば,期待収益率\(m=m_2\)となり,資産2に集中投資をしたことになります。

ここで,リスク\(\sigma^2\)は,資産1のリスク\(\sigma_1^2,\sigma_2^2\)を用いると,統計学の公式から,

$$\sigma^2=x_1^2\sigma_1^2+x_2^2\sigma_2^2+2\times \underbrace{\rho_{12}\sigma_{1}\sigma_{2}}_{資産1と資産2の共分散} $$

となります。\(\rho_{12}\)は,資産1と資産2の相関係数で,\(-1 \leq \rho \leq 1\)を満たします。

 

今,リスク\(\sigma^2\)を最小化したいので,微分積分学のラグランジュ未定乗数法を使います。

 

制約条件は,\(x_1+x_2=1\)なので,

$$L(x_1,x_2,λ)=\underbrace{x_1^2\sigma_1^2+x_2^2\sigma_2^2+2\times \rho_{12}\sigma_{1}\sigma_{2}}_{\sigma^2}-λ(x_1+x_2-1)$$

\(x_1,x_2,λ\)でそれぞれ偏微分し,偏微分した値を0とおくと,

$$\frac{∂L}{∂x_1}=2x_1 \sigma_1^2+2x_2 \rho_{12}\sigma_1 \sigma_2 -λ\tag{1}$$
$$\frac{∂L}{∂x_2}=2x_2 \sigma_2^2+2x_1 \rho_{12}\sigma_1 \sigma_2 -λ\tag{2}$$
$$\frac{∂L}{∂λ}=-x_1-x_2+1=0 \tag{3}$$

となります。式(1)と式(2)を連立して,λを消去した式と,式(3)を連立されると,\(x_1,x_2\)が求まり,

$$x_1=\frac{\sigma_2^2-\rho_{12}\sigma_1 \sigma_2}{\sigma_1^2-2\rho_{12}\sigma_1 \sigma_2+\sigma_2^2}$$

$$x_2=\frac{\sigma_1^2-\rho_{12}\sigma_1 \sigma_2}{\sigma_1^2-2\rho_{12}\sigma_1 \sigma_2+\sigma_2^2}$$

となります。

よって,総資産は,資産1に\(\frac{\sigma_2^2-\rho_{12}\sigma_1 \sigma_2}{\sigma_1^2-2\rho_{12}\sigma_1 \sigma_2+\sigma_2^2}\),資産2に\(\frac{\sigma_1^2-\rho_{12}\sigma_1 \sigma_2}{\sigma_1^2-2\rho_{12}\sigma_1 \sigma_2+\sigma_2^2}\)だけ配分すれば,リスクを最小化できることがわかりました。

しかし,\(x<0\)となった場合は,空売りをしなければいけなくなります。

期待収益を設定した上でリスクを最小化したい

先ほど同様に,資産1,資産2におけるリスク最小化問題を解きましょう。ただし,今回は,
運用利回り\(r\)をめざした分散投資を行いましょう。

先ほど同様,ラグランジュ未定乗数法を使って解きます。

今回の制約条件は2つで,\(x_1+x_2=1\)と\(r=m_1 x_1+m_2x_2\)となりますので,

$$L(x_1,x_2,λ,h)=x_1^2\sigma_1^2+\sigma_2^2+2\times \rho_{12}\sigma_{1}\sigma_{2}-λ(x_1+x_2-1)-h(m_1x_1+m_2x_2-r)$$

となります。

後は,先ほど同様に4つの独立変数を偏微分して,0とおけば,

$$\frac{∂L}{∂x_1}=2x_1 \sigma_1^2+2x_2 \rho_{12}\sigma_1 \sigma_2-λm_1 \tag{1}$$
$$\frac{∂L}{∂x_2}=2x_2 \sigma_2^2+2x_1 \rho_{12}\sigma_1 \sigma_2-λm_2 \tag{2}$$
$$\frac{∂L}{∂λ}=-x_1-x_2+1=0 \tag{3}$$
$$\frac{∂L}{∂h}=-m_1x_1-m_2x_2+r=0\tag{4}$$

となりますが,資産が2つの場合は,式(3)と式(4)を連立させれば良さそうですね。

すると,

$$x_1=\frac{r-m_2}{m_1-m_2}$$
$$x_2=\frac{m_1-r}{m_1-m_2}$$

となります。

 

つまり,資産1に\(\frac{r-m_2}{m_1-m_2}\),資産2に\(\frac{m_1-r}{m_1-m_2}\)だけ配分すれば,期待収益率は\(r\)になります。

 

資産が2つの場合は,リスク\(\sigma^2\)を考慮せずとも,リスクを最小化できる配分を決定できますが,資産が3つ以上になると,リスク\(\sigma^2\)を考慮しなければいけなくなります

また,\(x<0\)となったら空売りをしなければいけなくなります。

エクセルでデータ解析

まず,ポートフォリオ理論でリスクを最小化するポートフォリオを作る為に必要な変数をまとめます。

1. 資産\(i\)の期待利回り\(r_i\)
2. 資産\(i\)と資産\(j\)の共分散\(\sigma_{ij}\)(※\(i=j\)も含める)

 

ここで残念なお知らせです。

 

期待利回り\(r\)と各資産同士の共分散\(\sigma_{ij}\)は,どのサイトにも載っていないので,自分で計算する必要があります(´・д・`)

株価の利回り\(r\)は,Yahooファイナンスに掲載されています。

Yahooファイナンスから1株配当と取引値をエクセル(Excel)にスクレイピングして,

$$r=\frac{売値―買値}{買値}+\frac{1株配当}{買値}$$

と計算すれば求められます。

共分散\(\sigma_{ij}\)の計算方法は,資産\(i,j\)の値段と,その時間平均をそれぞれ\(p_{i,k},p_{j,k},\bar{p_i},\bar{p_j}\)とすれば,

$$\sigma_{ij}=\frac{1}{N}\sum_{k=1}^{N}(p_{i,k}-\bar{p_i})(p_{j,k}-\bar{p_j})$$

で求められます。ただし,\(\bar{p_i},\bar{p_j}\)はそれぞれ,

$$p_i=\frac{1}{N}\sum_{k=1}^{N}p_{i,k}$$

$$p_j=\frac{1}{N}\sum_{k=1}^{N}p_{j,k}$$

です。

データを取得して,エクセル(Excel)に自動でストックするツールを作るのもアリだと思います。

数学とプログラミング技術があれば可能です。(ツールの作成に1週間はかかると思います。)

 

保有する金融商品は、デフォルト(元本割れ)のリスクを下げたい方は、16個くらいがオススメです。(株式を16種類保有すればいい!)

16個より多くの金融商品を持っても良いですが、更に上の分散効果は期待できません。

 

ここで、株を16種類に分散投資するために必要な資金を求めましょう。

 

ニューヨークダウ平均株価を見てみると、1株当たり2~3万円くらいです(2020/4/09時点)。

そして、株は1単位100株です。

よって、

 

2~3万円/株×100株/単位×16単位=3200万円~4800万円

 

株式の分散投資を本格的に行う為には、少なくとも3200万円~4800万円以上の資金が必要になることがわかります。

ポートフォリオ理論を活用したければ、更に多くの資金が必要です。

資金が大きすぎる!

ポートフォリオ理論|まとめ

ポートフォリオ理論まとめ

・リスク\(\sigma^2\)を最小化する数学の問題を解く

・リスク最小化問題を解く為に必要な変数は,Yahooファイナンスから取得する

・16個くらいの資産に分散すると良い

最後に

実は以前に,ポートフォリオ理論を用いて,FXの投資配分最適化シートを作りました。でも、面倒になったので途中で断念しました。

ABOUT ME
ユキ
数学担当です。お金大好き大学生やってます。 講義がないときは、だいたい図書館にいるので図書館の門番とも呼ばれています。 L・O・V・E ラブリー マネー!