証明する!
今回は,先日記事に上げた完全数とメルセンヌ数の公式の証明をします。
完全に理解したい人は紙と鉛筆を使って計算しながら,記事を読んでいくことを推奨します。
完全数とは(おさらい)
完全数とは,自分自身を除く約数の和に等しくなる自然数のことをいいます。
言い換えれば,完全数とは,約数の和が自分自身の2倍になる数のことをいいます。約数の和\(S(n)\),完全数を\(n\)とすると,次のような式で表せます。
$$S(n)=2n$$
完全数の例
- 6(=1+2+3) 6の約数は1,2,3,6なので6以外を足した数
- 28(=1+2+4+7+14) 28の約数は1,2,4,7,14,28なので28以外を足した数
- 496(=1+2+4+8+16+31+62+124+248) 同上
のようなものです。
メルセンヌ数(おさらい)
メルセンヌ数とは,\(2^n-1\)の形をした自然数のことをいいます。また,略記していますが,n,kは自然数です。
証明する完全数の命題
1:「\(2^n-1\)が素数ならば,\(2^{n-1}(2^n-1)\)は偶数の完全数である」
2:「偶数の完全数は全て\(2^{n-1}(2^n-1)\)で表される」
3:メルセンヌ数\(2^n-1\)の中で,nがkの倍数のものは\(2^k-1\)の倍数となる
上記3つを証明します。
証明1:「\(2^n-1\)が素数ならば,\(2^{n-1}(2^n-1)\)は偶数の完全数である」
完全数をmとする。
証明するために用いる式
- \(S(m)=2m\)
- \(m=2^{n-1}(2^n-1)\)
- \(\sum_{k=1}^{n} r^k=\frac{r^{n+1}-1}{r-1}\)
- \(S(ab)=S(a)\times\S(b) (a,bは互いに素)\)
1.は完全数の式で2.は題意より明らかとなります。
3.は等比数列の和の公式です。
<証明>
\(S(2^{n-1}(2^n-1))=2^n(2^n-1)\)を示せばいい
$$(左辺)= S(2^{n-1}(2^n-1))$$
$$=S(2^{n-1})\times S(2^n-1) (∵2^{n-1},2^n-1は互いに素)$$
$$=(1+2+2^2+2^3+\dots+2^{n-1})\times(1+2^n-1)$$ (∵題意より\(2^n-1\)は素数)
$$=(2^n-1)\times(2^n)$$ (∵等比数列の和の公式)
$$=2^n(2^n-1)$$
\(m=2^{n-1}(2^n-1)\)とすると,\(S(m)=2m\)が成立するので,mは完全数。
はい終わり―。
証明2:「偶数の完全数は全て\(2^{n-1}(2^n-1)\)で表される」
この証明は 背理法(Aではないことがわかれば、Bになる的なやつ)を使うので,少し難しいですが頑張ってください。
証明1同様に,完全数をmとします。
証明するために用いる式
- \(S(m)=2m\)
- \(\sum_{k=1}^{n} r^k=\frac{r^{n+1}-1}{r-1}\)
- \(S(ab)=S(a)\times\S(b) (a,bは互いに素)\)
まず,\(m=2^{n-1}A\)とおきます。
そして,両辺の係数比較をしてAが\(2^n-1\)であることを示せば大丈夫です。
<証明>
偶数の完全数m=\(2^{n-1}A (2^{n-1},Aは互いに素)\)とおき,\(S(m)=2m\)から
\(A=2^n-1)を示せば良い。
$$(左辺)=S(2^{n-1}A)=S(2^{n-1})S(A)=2\times2^{n-1}A$$
$$(1+2+2^2+2^3+\dots+2^{n-1})S(A)=2^nA$$
$$(2^n-1)S(A)=2^nA (∵等比数列の和の公式)$$
ここで,両辺の係数比較を行う。素因数分解は一意に定まるから,両辺の素因数分解は一致するはずである。よって,\(S(A)=2^nl\),\(A=(2^n-1)l\)と求まる。(lは奇数)
ここで,示したい式は,\(A=2^n-1\)だったから,l=1ということを示せばいいので,ここからは,l=1を背理法で証明する。
\(l≠1\)と仮定して,\(S(m)\)と\(2m\)の等式が成り立つかどうか確認する。
$$S(m)=(2^n-1)S(A)=(2^n-1)(1+\dots+l+\dots+2^n+\dots+2^nl)$$
$$2m=(2^n-1)2^nl$$
ということで,明らかに\(S(m)≠2m\)である。この等式が成立しない理由は,l≠1という仮定が誤りであったからであるので,l=1でなければならない。
よって,偶数の完全数mは\(m=2^{n-1}(2^n-1)\)で一意に定まる。
ちょっと疲れたねー。じゃあラスト行くよー。
証明3:メルセンヌ数\(2^n-1\)の中で,nがkの倍数のものは\(2^k-1\)の倍数となる
nはkの倍数なので,n=mk(mは自然数)とする。
<証明>
$$2^n-1=2^{mk}-1$$
$$=(2^k)^m-1$$
ここで,第1項\((2^k)^m\)に2項定理を適用する。a=\(2^k-1\),b=1として与式を展開すると,
$$=(2^k-1+1)^m=\sum_{r=0}^{m} (2^k-1)^{m-r} {}_n \mathrm{C}_r$$
$$=(2^k-1)(\sum_{k=0}^{m-1} (2^k-1)^{m-r-1} {}_n \mathrm{C}_r)+1$$
よって,\(2^n-1\)は,
$$2^n-1=(2^k-1)\sum_{k=0}^{m-1} (2^k-1)^{m-r-1} {}_n \mathrm{C}_r$$
\(\sum_{k=0}^{m-1} (2^k-1)^{m-r-1} {}_n \mathrm{C}_r \)は明らかに自然数なので,
\(2^n-1\)は\(2^k-1)の倍数であるといえる。
ふぅ終わりました ^^) _旦~~
最後に
3番目の証明は,九州大学入試問題の過去問をアレンジして作りました。
今回の記事は,証明するだけの記事になってしまいましたが,大学受験を控えている高校生に役立てることが出来るような内容にしました。