通信方式の問題を解いたので,皆さんに問題の解法をシェアしたいと思います。
問題1
\(DSB\)信号\(v_{DSB}(t)=0.3A \cos (2\pi f_m t)cos(2\pi f_ct)\)と通常の振幅変調信号\(v_{AM}(t)=A \cos (2\pi f_c t)+v_{DSB}\)について以下の問いに答えよ。\(f_m\)は変調信号周波数,\(f_c\)は搬送波周波数である。
① 通常の振幅変調信号\(v_{AM}(t)\)の変調率はいくらか。
② 通常の振幅変調信号\(v_{AM}(t)\)を図示せよ。
問題1解答
①解答
\(v_{AM}(t)=A\cos (2\pi f_c t)+0.3A\cos (2\pi f_m t) \cos (2\pi f_c t)\)
\(v_{AM}(t)=A\cos (2\pi f_c t)[1+\underbrace{0.3}_{変調率}\cos (2\pi f_m t)]\)
よって,\(v_{AM}(t)\)変調率は0.3
<終>
②解答
\(A+0.3A\cos (2\pi f_m t)\)と\(-A-0.3A\cos (2\pi f_m t)\)を作図します。
そうすると,\(v_{AM}(t)\)波形を描けます。
後は\(v_{AM}(t)\)だけを残して,補助線を消せば完成です。
問題2
「\(SSB\)信号は\(DSB\)信号に直交成分を加えたものである」このことをトーン信号\(m_0(t)=\cos (2\pi f_m t)\)を持つ\(DSB\)信号\(v_{DSB}(t)=m_0(t)\cos (2\pi f_c t)\)を用いて説明しなさい。
問題2解答
\(v_{DSB}(t)=\cos (2\pi f_m t) \cos (2\pi f_c t)\)
\(v_{DSB}(t)=\underbrace{\frac{1}{2}\cos [2\pi (f_c+f_m)]}_{v_{USSB}(t)}+\underbrace{\frac{1}{2}\cos [2\pi (f_c-f_m )] t]}_{v_{LSSB}(t)} \)
\(v_{DSB}(t)=\underbrace{\frac{1}{2}\cos (2\pi f_c t) \cos (2\pi f_m t)+ \frac{1}{2}\sin (2\pi f_c t) \sin (2\pi f_m t)}_{v_{LSSB}(t)}\)
\(+\underbrace{\frac{1}{2}\cos (2\pi f_c t) \cos (2\pi f_m t)- \frac{1}{2}\sin (2\pi f_c t) \sin (2\pi f_m t)}_{v_{USSB}(t)}\)
2つの\(SSB\)信号の内,上側波帯を\(v_{USSB}(t)\),下側波帯を\(v_{LSSB}\)とすると
\(v_{DSB}(t)\)信号は,2つの\(SSB\)信号の和で表される。\(SSB\)信号は\(DSB\)の直交成分を含んでいるが,2つの\(SSB\)信号の和を取ることで打ち消される。
問題3
単一周波数\(f_m\)の正弦波で周波数変調された信号が次式で表されるとき,以下の問に答えよ。\(f_c\)は搬送は周波数,\(\beta\)は変調指数である。
$$v_{FM}(t)=A\cos [2\pi f_ct+\beta \sin (2\pi f_m t)] \beta ≪ 1$$
① 周波数スペクトルの表現式を導出せよ。
② ①で導出したスペクトル分布を図示せよ。
問題3解答
①解答
\(v_{FM}(t)=A\cos [2\pi f_ct+\beta \sin (2\pi f_m t)]\)
\(v_{FM}(t)=A\cos (2\pi f_ct)\cos [\beta \sin (2\pi f_m t)]- A\sin (2\pi f_ct)\sin [\beta \sin (2\pi f_m t)]\)
\(\beta ≪1 \)より,
\(v_{FM}(t)=A\cos (2\pi f_ct)- A\sin (2\pi f_ct)\beta \sin (2\pi f_m t)\)
\(v_{FM}(t)=A\cos (2\pi f_ct)-\frac{A\beta}{2}\cos (2\pi (f_c-f_m))t)+ \frac{A\beta}{2}\cos (2\pi(f_c+f_m )t)]\)
両辺をフーリエ変換すると,
\(V_{FM}(f)=\frac{A}{2}[\delta (f-f_c)+\delta(f+f_c)]+\frac{A \beta}{4}[\delta (f-f_c-f_m)+\delta (f+f_c+f_m)\)
\(-\delta (f-f_c+f_m)-\delta (f+f_c-f_m)]\)
※\(\delta (t)\)は,デルタ関数と呼ばれる特殊関数
※補足
\(x\)が限りなく0に近い場合,マクローリン展開の1次の項に近似できる。
\(\cos x≒1,x ≪1 \)
\(\sin x≒x,x ≪1 \)
②解答
※補足
デルタ関数\(\delta(t)\)の定義は,
\(
\delta(t)=\begin{cases}
\infty & t=0 \ \text{のとき}\\
0 & t≠0 \ \text{のとき}
\end{cases}
\)
問題4
(a)~(d)にあてはまる適当な語句を答えよ。
「パルス振幅変調信号の振幅レベルは連続値を取るから,伝送路において雑音が加わると元の信号波形を再現するのは難しい。したがって,情報信号のとる連続値をその値に最も近い離散値で置き換え,離散レベルを伝送することにすれば,受信側では極端な雑音が加わらない限り信号を識別することはずっと容易になる。このように,連続値を近似的に離散値で(a)化し,その値をさらに,1,0などの少数のパルスの組み合わせで(b)化する変調方式を(c)変調という。しかし,いったん(a)化されたら離散的信号から連続的信号を復元することはできず,避けられないひずみを伴う。これは一種の雑音であり,(d)と呼ばれる。」
問題4解答
(a)量子,(b)符号,(c)パルス符号,(d)量子化雑音
問題5
図1はフラットトップ標本化\(PAM\)信号発生のブロック図をしめしたものである。各素子は以下の働きをする。
標本化ゲート:情報信号を入力し,インパルス列を用いた標本化信号\(v_{S}(t)\)を出力する。
保持回路:インパルスを入力し,方形パルス\(p(t)\)を出力する。
このフラットトップ標本化について以下の問に答えよ。
図1 フラットトップ標本化\(PAM\)信号発生のブロック図
① 時間領域でのフラットトップ\(PAM\)信号は\(v_{PAM}(t)=v_{S}(t)❎p(t)\)と表される。ここで❎は「畳込み」を表す,\(V_{S}(t),p(t)\)の周波数スペクトル密度を\(V_{S}(f),P(f)\)とするとき,フラットトップ\(PAM\)信号の周波数スペクトル密度\(V_{PAM}(f)\)はどのような式で表されるか答えよ。
② \(V_{S}(f)\frac{1}{T}\sum_{n=-\infty}^{\infty}V(f-\frac{n}{T}),P(f)=S_a(kf)\)とする。ここで,関数\(V(f)\)は図2のようにあらわされ,\(T\)は周期を表す。また,\(S_a(x)\)は標本化関数であり,\(k\)はパルス幅等で決まる定数である。このとき\(V_{S}(f),P(f)\)を図示せよ。ただし,\(P(f)\)の範囲は\(-2\pi \leq kf \leq 2\pi\)とする。
③ 上記問題①,②を利用し,\(-\pi \leq kf\leq\pi\)の範囲で\(V_{PAM}(f)\)を図示せよ。ただし,\(\frac{\pi}{k}=\frac{5}{2T}\)とする。
問題5解答
①解答
\(v_{PAM}(t)=v_{S}(t)❎p(t)\)
両辺をフーリエ変換すると,
\(V_{PAM}(f)=V_{S}(f)P(f)\)
②解答
③解答
\( V_{PAM}(f)=V_{S}(f)P(f)\)
を用いると,
関連記事
通信方式H31問題->
電子物性H31問題->
最後に
DSB信号,AM信号はまだ理解出来ますが,FM信号は難しいですね。FM信号の難しい所はなんと言っても,ベッセル関数を使うところでしょう。ベッセル関数見るだけで体力持って行かれる。