今回も心理学の記事です
今回は色彩心理学の入門記事です。
とは言っても、今回は何色はこんな効果があるよー!っていう記事ではなく、色って何?っていう物理学的な解説になります。
今回の記事はこちらの本を参考にしています。
色が与える簡単な効果はこの記事で解説しています。
この記事の次に、色の与える効果についてさらに深堀りしていきます。
今回の記事を読むメリットは、
・色とは何かがわかる。
です。
色彩心理学
日本では、色と心理との関わりについて大きな関心が持たれています。
商品の売り上げ、ファッションの流行だけでなく、鉄道会社が自殺防止を目的に青い照明を用いたことを見ても、色の効果に対する期待が心理学の中でもあります。
その中でまず
色をどうやって定義するのかという 物理学
どうして見えるのかという 生理学
色がどのように登場し、使われ、意味を持ったのかという 人類学、社会学
などを総合的に見ていく必要があります。
とはいえ、私も専門家ではないので拙い部分はありますが、ざっくり解説したいと思います。
色とは何?
結論:色は光です
色を話をするにあたり、まずその物自体に色がついていないことを説明する必要があります。
色は形や質感のようにその物自体についているように見えますが、実際は光です。
無色透明に見えている白い光の中に、私たち人間に色を感じさせる要素があります。
太陽の光や蛍光灯の光は「白色光」と呼ばれます。この白い光の中に人間の感じることのできる色の要素があります。それを発見したのはアイザックニュートンです。
彼は太陽の白色光をプリズムに通して分光したところ、光の色の帯が現れることを発見し、いくつもの色の要素が重なってできていることを証明しました。
つまり、太陽や蛍光灯の白色光は、赤、橙、黄、緑、青、藍、青紫(せきとうおうりょくせいらんし)などの色が複合してできたものということです。
これの見え方によって、色が私たちの目に届いているということです。
光とは何?
光とは、電磁波の一種です。電磁波とは電場と磁場が作る放射エネルギーの一つです。
電磁波は波長の長さによって種類に違いがあり、こちらの図がわかりやすいと思います。
赤外線、紫外線、X線、γ線などがあります。
赤外線から紫外線の間(380nm~780nm)を 可視光線と呼ばれ、人に色覚を感じさせる領域となっています。
可視光線以外の電磁波を人間は見ることはできません。
色を見るための条件
物体の色が存在するには、
光・物体・人間の感覚
3つが必要になります。
物体の色を見る流れ
1. 自ら光を発する光源(太陽や蛍光灯)が光を放つ
2. 物体に当たり、人に色を感じさせる特徴にしたがって、波長は反射・吸収します。(黄色なら、500nm~700nmの波長を反射し400nm~500nmを吸収)
3. 反射した波長は人の目に入り、視細胞を刺激してその信号が脳に伝わり、処理される
光や物体は物理量としてとらえることはできますが、人間が感じている世界を物理量としてとらえることはできません。
色は人の内側で起きている現象と外部の刺激とのつながりによるものです。
色温度
色と温度の関係として、色温度というものがあります。
釘などの鉄を熱してみると、最初は赤く光り始め、やがて白っぽい色になっていき、温度の高低と色には関係があります。
色は温度が低い状態では暗い赤で、高くなるにつれて赤、橙、黄、白、青白と変化していきます。
自然光と主な照明の色温度
照明の色温度が低いと温かみがあるように感じられて落ち着き、高いと涼しげな印象を与えます。
色の見え方の影響として、色温度が低いと寒色系は濁ってみえ、暖色系は鮮やかに見えるが、高いと反対に暖色系は濁って見え、寒色系は鮮やかに見えます。
色や明るさの恒常性
外から部屋に入ったとき、色が違って見えた経験はありませんか?
この違和感はすぐになくなり、いつも通りの感覚を取り戻すと思います。
このような人間の反応を「恒常性」と呼びます。
色の恒常性…物体の色が異なる光源の下で、物理的には変化するのに、同じ色として知覚する現象
大きさの恒常性…見る距離によって、物体の大きさは異なるのに同じ大きさとして知覚する現象
形の恒常性…見る角度によって物体の形は異なるのに、同じ形のものと知覚する現象
また、自然の光の下で見ることと同様に感じるように調整されることを「色順応」と呼びます。
色を感じる眼のメカニズム
ここから、少しだけ眼のメカニズムについての解説です。
眼球の断面はこのようになっています。(各名称等は省略します)
網膜は脳細胞が発達したものといわれ、視細胞などの光受容器があり、外部から入射された光刺激を電気信号に変換します。
角膜と虹彩、水晶体の間には養分を与える眼房水で満たされた眼房室があります。
色素を持つ虹彩はカメラの絞りにあたり、開口部となる動向の大きさを変化させて入射する光の量を調整しています。
角膜と水晶体はカメラのレンズに相当し、ここで光は屈折して網膜上に像を結びます。
水晶体は、毛様体にある毛様体筋の収縮弛緩によって厚みを変化させ、ピントを調整をしています。
水晶の後ろはゼリー状の硝子体で、形態保存の役割を担っています。
視細胞の役割
網膜にある神経組織は3層構造になっており、ここで光の情報は次々と集約化され、電気信号として脳へ送られます。
光受容器細胞の層には、錐体(すいたい)、桿体(かんたい)の2種類の視細胞があります。
錐体は中心窩と呼ばれる視軸部分に集中しており、600万から700万個あります。明るい状態で働き、色に反応する。
赤、緑、青紫に高い感度を示す3タイプがあり、それぞれR錐体、G錐体、B錐体と呼び、それぞれ6:3:1の割合で存在している。
桿体は網膜の周辺領域にあり、1億2000万~3000万個ある。
明るさを感じる細胞で、その感度は錐体の数の数百倍といわれ、桿体には ロドプシンという色素が含まれ、光が当たると分解され、光がなくなると再合成して、明るさの情報を送っています。
明順応と暗順応
人には環境の変化に慣れて活動できるよう、さまざまな機能が備わっています。
明るい場所から暗い場所に行くと、初めはよく見えませんが、次第に暗さになれて見えてきますよね。それを「暗順応」といいます。
これは暗い場所に行くと錐体の機能が落ちてよく見えませんが、5分から7分で桿体の分解されていた色素ロドプシンというものが再合成されてあたりがよく見えてきます。
そのロドプシンは30分ほどで止まりそれ以上よく見えることはありません。
反対に暗い状態から明るい場所に出ると、一瞬は見えにくいですがすぐに見えるようにことを「明順応」と呼びます。これも同様に桿体から錐体の感度に切り替わるからです。
2分から3分で回復し、10分でほぼ完全に順応します。
これは映画館などの暗い場所と明るい場所を行き来するときに、よく起こります。
プルキンエ現象
やっとここまでたどり着きました!これを説明するための長い前置きとなりました。
明順応で明るく見えていた赤や黄などが暗くくすんで、青や緑が明るく鮮やかに見える現象のことを「プルキンエ現象」と言います。
これは暗順応と明順応の感度の違いから起こるものです。
明るさが変化するときに、錐体から桿体に視細胞の動きが移動するとき、感度のずれにより、波長の低い方にずれていくというものです。
この図に可視光線の波長を合わせてみると、わかりますね。
このことから、明るく見えていた赤や黄などが黒くくすんで、反対に青や緑が明るく鮮やかに見えます。
夜間の車の運転や、寝る前のスマホなどの光でなることがあります。
色の基礎知識
人間は1000万色以上の色を識別することができると言われています。
その色はどのように分けられていて、どのように識別しているのでしょうか?
色の三属性
色が持つ3つの特性
・色相
・明度
・彩度
と分類することができます。
それぞれについて解説していきます。
色相
色の違いを感じさせるものとして、主なものが色相です。
色相とは、赤、青、黄などの色と感じている「色味」のことです。
この色の関係を表したものが、上図に示す 「色相環(カラーサークル)」です。
この正反対にあるような色を「補色」といいます。
混色すると無彩色になる色の関係です。
この補色を利用すると、見せたいものの色の印象を高めるテクニックとして非常に使いやすいです。
明度
明度は色の明るさを感じさせる特性です。
明るい色は明度が高く、暗い色は明度が低いと言えます。
青で考えると水色は明度は高いですが、紺は明度が低いとなります。
白や黒といった、無彩色は明度のレベルによってつけられた名前です。
もっとも明度の高いものが白、もっとも明度の低いものが黒ということです。
上図でみると、縦の動きが明度ということになります!(上の方が明度が高い)
彩度
彩度は色の鮮やかさについての特性です。
赤に黒色を足すと、彩度の低い茶色に近い色になり、白を足すと彩度の高い薄紅色になります。
暗めの色を足すと、彩度は下がります。
上図でみると、横の動きが彩度になります!(右の方が彩度が高い)
色を定量的に表す表色系
このように色相、明度、彩度で表された色は共有するためには定量的に表すことが大事になります。
定量的な実験などをもとに、数字や記号などを使って表す方法が「表色系(カラーシステム)」と呼ばれるものです。
こちらがその表色系です。
この画像はこちらから引用しております。
表色系にはさまざまあり
・マンセル表色系…アメリカで開発
・PCCS(日本色研配色体型)…日本で開発し、日本の検定試験や色彩教育で使用
・NCS表色系…スウェーデン工業規格
・CIE表色系(XYZ表色系)…国際照明委員会(CIE)が設定
などがあります。
混色のしくみ
混色とは、色を混ぜて別の色を作ることです。
赤と青を足したら紫になるみたいな感じですね。
加法混色(光で混ぜる)
光が目に届き、そのまま網膜上で混ざって混色が成立する光の混色を「加法混色」と呼びます。
混色して作ることのできない独立した色を原色と呼び、RGB(赤、緑、青)です。
一般的に言われる「 光の三原色」ですね。
この3色をすべて混ぜると白い光となります。つまり明度が足されている形になります。
このように、色を重ねることで明度が足されることから加法混色と言われます。
減法混色
フィルターや絵の具などの物質を重ねて、作ることを「減法混色」と言います。
減法混色の原色ははCMY(シアン、マゼンタ、イエロー)です。
一般的に言われる「 色の三原色」ですね。
ちなみにこの3色すべて混ぜると黒になります。つまり明度がなくなっていることになります。
このように、色を重ねることで光は吸収され明度が引かれていることから、減法混色と言われます。
色の対比
私たちはある1つの色だけを見ているということは少なく、背景や周囲の色も勝手に目に入ってきます。
それにより、見ている色が実際とは違った色として知覚することがあります。
その1つが、「対比」と呼ばれる現象です。
継時対比と同時対比
対比の基本は、互いの差が強調されて見えるということです。
写真などでもコントラストという表現がされますね。
対比には、 空間的な視点の移動で時間をおいて見た場合に生じる「継時対比」と、 同時に見ている状態で生じる「同時対比」があります。
継時対比
赤いハートをじっくり見た後に、視線を黒い点に移すと緑色が現れると思います。
心理補色ともいわれ、ある色の残像として浮かび上がる正反対の色のことで、残像のことを補色残像といいます。
これが継時対比です。
同時対比
これに対して、同じ画面上で隣接している色同士が影響し合い、色が異なって見えるのが、同時対比です。
同時対比には
・明度対比
・彩度対比
・色相対比
・補色対比
があります。さらーっと紹介します。
明度対比
黒の中の灰色と白の中の灰色は異なって見えますが、同じ色です。
周りとの明度の差が強調され、本来の色より暗く、もしくは明るく感じることが明度対比です。
周囲の明度は高い方が印象に残りやすいとも言われます。
彩度対比
明度対比とほぼ同じ、彩度の高い色に囲まれるか、彩度の低い色に囲まれるかで色の感じ方が変わることが彩度対比といいます。
周りが彩度が高いと、濁っているように見えるということです。
色相対比・補色対比
色相対比は、異なった色同士の間で起き、本来の色と違って見えるというものです。
補色対比と補色であるかどうかです。
最後に
今回は簡単に色の基本的な知識などを解説していきました。
最後までじっくり読まれた方は勉強熱心な方で、尊敬します!
自分で勉強していて、今まで当たり前だと思っていたけど原理は知らないことがたくさんあると感じました。
色が光の反射かも!?なんて思いませんよね。
次は色が与える影響について、かなり詳しく書いていこうと思います。
最後までお疲れ様でした。