晴れ男なので、ひなさん必要ありません。
今日は,新海誠さんの最新映画「天気の子」の主題歌である
RADWIMPSさんの「愛にできることはまだあるかい?」
の愛を虚数iに変えて,「iにできることはまだあるのか?」という検証を含めた虚数iの魅力を話します。
http://j-lyric.net/artist/a04ac97/l04ce5f.html
今回の記事を読むメリット
・虚数iの必要性がわかる
iって何?
虚数iは,この世に存在しない想像上の数です。
iという文字は,想像上の数(imaginaire)の頭文字をとったものです。
虚数の性質を紹介します。
虚数iの性質【これだけ】
$$i=\sqrt{-1}$$
$$i^2=-1$$
iは-1の平方根として,知られています。なので,iを2乗すると-1になります。
複素数とは
実数と虚数iを組み合わせた数のことを複素数といいます。
3+4iや8-8iのような数のことですね。
虚数iは美しい公式【オイラーの公式】
$$e^{i\theta}=cos\theta+isin\theta$$
これは,オイラーの公式と呼ばれているものです。
指数関数が,三角関数と等式をなしていることに魅力を感じますね。
この公式は,物理屋さんや,電気工学を使っている人たちにとって,避けては通れない公式です。
指数関数は,虚数iを使うと三角関数になる
オイラーの式を少し変形します。
$$e^{i\theta}=cos\theta+isin\theta$$
$$e^{-i\theta}=cos\theta-isin\theta$$
これは\(cos\theta\),\(sin\theta\)を未知数とした。
連立方程式となっているので,
$$cos\theta=\frac{e^{i\theta}+e^{-i\theta}}{2} $$
$$sin\theta=\frac{e^{i\theta}-e^{-i\theta}}{2i} $$
と書ける。
1のi乗は?
1を何回かけても1ということは,皆さんご周知のはず。
ですが,1のi乗は何になるのか,ということで,計算します。
$$1^i=e^{ilog(1+i2n\pi)}=e^0=1$$
1になりました。1のi乗しても1なんですね。
iは積分を簡単にする
大学に入ってからの積分は,変なところに三角関数が入ってきたり,積分範囲が無限大までいく場面がしばしば出てきます。
その問題を簡潔にするために積分経路を変更して,複素積分という複素数に渡った積分を行います。
iは微分方程式の解に出てくることがある。
微分方程式とは,方程式の中に微分が含まれる方程式のことを言います。
具体例:
$$\frac{dy}{dx}-y=0 , \frac{d^2y}{dx^2}+2\frac{dy}{dx}+2y=0$$
上のような微分方程式の場合,$$y=Ce^{λx}$$とおくことで解くことが可能です。
因みに、答えはそれぞれ
$$y=Ce^x y=C_1e^{(-1+i)x}+C_2e^{(-1-i)x}$$
例題1:
$$\frac{1}{2\pi}\int_{0}^{2\pi} \frac{1}{a+bsin\theta} \,d\theta$$
この問題は,分母に三角関数があるので,\(t=\frac{tan\theta}{2}\)とおけば,解けそうな気がしますが,積分の範囲が0から2πまでなので,積分範囲が実数のまま積分を解くと難解なものになります。
そんなときに,iがこの問題を解決します。
例題1:解答
問題の解法としては,次の3つの手順を踏めば解けます。
1.オイラーの公式を使って,\(sinθ=\frac{e^{iθ}-e^{-iθ}}{2i}\)と変形する。<<大学数学オイラーの公式
2.\(z=e^{iθ}\)とおいて,与式をzの積分に書き換える。<<高校数学Ⅲの置換積分
3.留数定理を用いると,答えにたどり着く<<大学数学の複素関数論
(1) オイラーの公式を使って,\(sin\theta=\frac{e^{iθ}-e^{-iθ}}{2i}\)と変形する。
$$\frac{1}{2\pi}\int_{0}^{2\pi} \frac{1}{a+b\frac{e^{iθ}-e^{-iθ}}{2i}} \,d\theta$$
\(z=e^{iθ}\)について,zをθで微分する。
(2) z=e^{iθ}とおいて,与式をzの積分に書き換える\(\frac{dz}{dθ}=ie^{iθ}\)すなはち,\(dθ=\frac{dz}{ie^{i\theta}}\),積分範囲 θ:0→2π,z:|z|=1
$$=\frac{1}{2\pi}\oint_{|z|=1}\frac{1}{a+b\frac{e^{i\theta}-e^{-i\theta}}{2i}}\times \frac{1}{ie^{i\theta}}dz$$
$$=\frac{1}{2\pi}\oint_{|z|=1}\frac{1}{az+b\frac{z^2-1}{2i}}dz$$
$$=\frac{1}{2\pi}\oint_{|z|=1}\frac{1}{2iaz+b(z^2-1)}dz$$
$$=\frac{1}{2\pi}\oint_{|z|=1}\frac{1}{bz^2+2iaz-b}dz$$
(3) 留数定理を用いると,答えにたどり着く。
$$=\frac{2}{2\pi}\times2i\pi\times Res[\frac{1}{bz^2+2iaz-b}]$$
$$=2i\times[\frac{z+ia-\sqrt{-a^2+b^2}}{bz^2+2iaz-b}]_{z=-ia+\sqrt{-a^2+b^2}}$$
$$={1}{bz^2+2iaz-b}]$$
$$=2i\times[\frac{1}{z+ia+\sqrt{-a^2+b^2}}]_{z=-ia+\sqrt{-a^2+b^2}}$$
$$=2i\times\frac{1}{2i\sqrt{a^2-b^2}}$$
$$=\frac{1}{\sqrt{a^2-b^2}}$$
ただし、(a>b)
普通に計算が面倒でした。(m_m)
虚数iを使う例
・常微分方程式を解く
・フーリエ解析、フーリエ級数展開(通信系)
・物理学全般
・量子力学
・複素表現するとき
量子力学への虚数の貢献度は偉大ですね。
iの物理学への応用
使用例の一つを紹介します。
iは電気工学系の人や,量子力学などで用いられます。
電気工学の場合は,iは計算を簡単にするために,用いられています。
具体例として,フェーザー表示があります。
量子力学の場合は,つじつまを合わせるためにiを使っています。
(ⅰ)電子工学の場合 <<高校物理インピーダンス
電気系の人は,jを使う
電気工学では,電流iと虚数iが混同するのを避けるために,虚数をjとして使います。
下例題
例題2:
次のRLC直列回路で,v=Asinωtの交流電圧がかかっているときの回路を流れる電流I
を求めよ。
例題2:解答
電気回路の3つの素子の公式
$$v_L=L \frac{di}{dt} V_R=Ri i=C \frac{dv_C}{dt}$$
電圧の式
$$v=v_C+v_L+v_R$$
電圧の式に3つの素子の公式を無理矢理代入していくと,最終的に以下の式が得られます。
$$\frac{dV}{dt}=\frac{I}{C}+L \frac{d^2 I}{dt^2 }+R \frac{dI}{dt}$$
電流Iを求める為には,この微分を含んだ方程式を解く必要があり,面倒です。(´・д・`)
しかし,この微分方程式は,フェーザー表示に直して解くことで,少しだけ簡単になります。
フェーザー表示
$$\frac{d}{dt}→jω$$
$$sin(ωt+φ)→\frac{e^{jφ}}{\sqrt{2}}$$
微分が邪魔なので,とすると,
$$jωV=(1/C-ω^2 L+jωR)I$$
になります。
$$I=\frac{V}{R+j(ωL-\frac{1}{ωC})}$$
$$=\frac{Ae^0}{\sqrt{2}\sqrt{R^2+(ωL-\frac{1}{ωC})^2}e^{jφ}}$$
フェーザー表示から元の式に戻すと,答えは,
$$i=\frac{Asin(ωt-φ)}{\sqrt{R^2+(ωL-\frac{1}{ωC})^2}}$$
$$(∵tanφ=\frac{ωL-\frac{1}{ωC}}{R})$$
量子力学に出てくるi
具体的には,シュレディンガー方程式や,波動関数などが上げられます。
何でも,物質の状態は複素数を表すことで,より厳密に表せるのだとか。
結論:虚数iにできることはある(主に物理学)
ここまで来て言いたかったのは正直,これに尽きます。
一番のメリットは計算が簡単になることですね。
虚数iのまとめ
$$i=\sqrt{-1}$$
・虚数iは複素式、オイラーの公式で使う超重要なもの
・虚数iは物理学に役に立つ
・iにできることはある!
最後に
映画「天気の子」の主題歌である「愛にできることはまだあるかい」という歌にあやかり,$$i$$について深く語りました。
$$i$$のありがたみを感じる為には,計算しまくることが大事です。
(ぶっちゃけ、日常生活では使わないんだよなぁ)
君(数学)と育てたあい(虚数)だから,君(物理学)とじゃなきゃ意味がないんだ