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どうも,ユキです。
モテる人は,たくさんチョコをもらうみたいですね。
今日は,バレンタインデーやクリスマスでプレゼントのやりとりを数学を使って検証していきましょう。
この記事を読むメリット
☑クリスマスやバレンタインデーの最適戦略を数学的に求めることができる
☑高校数学Ⅱ・Bの問題を2題解ける
☑数学の勉強になる!
クリスマス,バレンタインデーでプレゼントを渡すことは合理的か?
そもそも,クリスマスやバレンタインデーで好きな異性にプレゼントを贈ることは合理的な判断と言えるのでしょうか?
その疑問は,これらの特別な日に渡すプレゼントがサンクコスト(埋没費用)であるかどうかを考えることによって解消されます。
サンクコスト(埋没費用)とは,回収が不可能なコストのことを意味しています。
サンクコストになり得る可能性があるのは,用意するプレゼントにかけた費用や時間です。
しかし,皆さんご存じの通り,特別な日に異性の人にプレゼントを贈ることはサンクコストにはならず,むしろメリットだらけです。
まず,好きな人に接触する口実になりますよね?
それから,もらう相手側の立場で考えると,特別な日にもらう異性からのプレゼントというのは,後々,ボディブローのように効いてきます。(つまり,一度プレゼントを渡した相手は落としやすくなる)
更に,プレゼントを渡すことによって,恋愛が成就しようものなら本望です。
あと,18歳以上の方は,一人惨めにホスト通いをする時間と費用を節約できます!
もちろん,プレゼントを渡して告白したとしても,振られる可能性はあるわけですが,
普通の日よりも特別な日に告白した方が告白成功率は高いので,潔く好きな人を諦めることができるのではないでしょうか?
これらのメリットを踏まえると,クリスマスやバレンタインデーでプレゼントを渡すこと自体は合理的であるといえます。
理系なら費用対効果を考えてプレゼントを渡す
プレゼントを渡すと言っても,どのようなプレゼントを渡せばいいのでしょうか?
理系の人は大体,費用対効果を考えてプレゼントを渡すのではないでしょうか?
費用対効果とは,かけた費用に対して帰ってくる効果のことを言います。
プレゼントには下心がつきもので,
通常の人は,値段が高いプレゼントを上げれば,それに伴う見返りが待っているはずという考えで,プレゼントを渡します。
つまり,クリスマスやバレンタインデーは,一種のギャンブル(賭け)と言えるでしょう!
それでは,実際に数学を使って検証していきましょう。(数学恐怖症の方は読み飛ばしてください)
ギャンブラー破産問題
では,いきなり問題です。
高校数学Ⅱ・Bの数列の知識があれば,解ける(私は解けなかった)問題なので,
頑張って挑戦してみてください。(問題文のすぐ下に解答例も示しています。)
問題1:
\(X\)氏は 目標金額\(a\),資金\(n\) \(0 \leq n \leq a\),1回当たりの賭け金1でゲームを開始します。
個々のゲームで勝つ確率は\(p\)とすると,\(X\)氏が破産する確率\(Q(n)\)は
\(Q(n)=\left \{ \begin{array}{lll}
1-\frac{n}{a},& p=\frac{1}{2} \\
\frac{(\frac{1}{p}-1)^n-(\frac{1}{p}-1)^a }{1-(\frac{1}{p}-1)^a},& p≠\frac{1}{2}
\end{array}\right.\)
で表せることを示しましょう。(ヒント:漸化式に帰着させて解く)
破産確率\(Q(n)\)を減らす為にどうすればいいかを考えてもらうのが,この問題の狙いです。
問題1解答例
(1)\(p=\frac{1}{2}\)のとき
\(n\)の資本は確率\(\frac{1}{2}\)で\(n+1\)に増えて,確率\(\frac{1}{2}\)で\(n-1\)に減るので,
\(Q(n)=\frac{1}{2}Q(n+1)+\frac{1}{2}Q(n-1)\)
\(Q(n)+Q(n)=Q(n+1)+Q(n-1)\)
\(Q(n+1)-Q(n)=1・[Q(n)-Q(n-1)]\)
数列\({Q(n+1)-Q(n)}\)は,初項\(Q(1)-Q(0)\),公比1の等差数列なので,
\(Q(n+1)-Q(n)=Q(1)-Q(0)\)
また,数列\(Q(n)\)は,階差数列の公式を用いると,
\(Q(n)=Q(0)+\sum_{k=0}^{n-1}Q(1)-Q(0)\)
\(Q(n)=Q(0)+n[Q(1)-Q(0)]\)
ここで,\(Q(n)\)は破産確率なので,\(Q(0)=1,Q(a)=0\)が成立する。
\(Q(a)=Q(0)+a[Q(1)-Q(0)]=0\)
\(Q(1)-Q(0)=-\frac{Q(0)}{a}\)
よって,\(Q(n)\)は,
\(Q(n)=Q(0) -\frac{Q(0)}{a}n\)
\(Q(n)=1-\frac{n}{a}\)
<終>
(2)\(p≠\frac{1}{2}\)のとき
\(n\)の資本は確率\(p\)で\(n+1\)に増えて,確率\(1-p\)で\(n-1\)に減るので,
\(Q(n)=pQ(n+1)+(1-p)Q(n-1)\)
\(pQ(n)+(1-p)Q(n)= pQ(n+1)+(1-p)Q(n-1)\)
\(Q(n+1)-Q(n)=\frac{1-p}{p}[Q(n)-Q(n-1)]\)
数列\({Q(n+1)-Q(n)}\)は,初項\(Q(1)-Q(0)\),公比\(\frac{1-p}{p}\)の等差数列なので,
\(Q(n+1)-Q(n)=(\frac{1-p}{p})^n[Q(1)-Q(0)]\)
また,数列\(Q(n)\)は,階差数列の公式を用いると,
\(Q(n)=Q(0)+\sum_{k=0}^{n-1}(\frac{1-p}{p})^k [Q(1)-Q(0)]\)
\(Q(n)= Q(0)+ [Q(1)-Q(0)]\frac{1-(\frac{1-p}{p})^n}{1-(\frac{1-p}{p})}\)
ここで,\(Q(n)\)は破産確率なので,\(Q(0)=1,Q(a)=0\)が成立する。
\(Q(a)=Q(0)+ [Q(1)-Q(0)]\frac{1-(\frac{1-p}{p})^a}{1-(\frac{1-p}{p})}=0\)
\(Q(1)-Q(0)=-Q(0)\frac{1-(\frac{1-p}{p})}{1-(\frac{1-p}{p})^a }\)
よって,\(Q(n)\)は,
\(Q(n)=Q(0)= -Q(0)\frac{\cancel{1-(\frac{1-p}{p})}}{1-(\frac{1-p}{p})^a }\frac{1-(\frac{1-p}{p})^n}{\cancel{1-(\frac{1-p}{p})}}\)
\(Q(n)=Q(0)+Q(0)\frac{(\frac{1-p}{p})^n-1}{1-(\frac{1-p}{p})^a}\)
\(Q(n)=Q(0) \frac{(\frac{1-p}{p})^n\cancel{-1}+\cancel{1}+-(\frac{1-p}{p})^a }{1-(\frac{1-p}{p})^a}\)
\(Q(n)=\frac{(\frac{1-p}{p})^n-(\frac{1-p}{p})^a }{1-(\frac{1-p}{p})^a}\)
<終>
ギャンブラー破産問題からわかること
破産確率\(Q(n)\)は,プレゼントを渡した後に,撃沈する確率と置き換えることができます。
\(Q(n)\)は,
\(Q(n)=\frac{(\frac{1-p}{p})^n-(\frac{1-p}{p})^a }{1-(\frac{1-p}{p})^a}\)
でした。この式から,\(Q(n)\)を決める変数は,\(p,n,a\)であることがわかります。
ここで,\(n\)は,プレゼントを渡す相手によらず一定です。(プレゼント渡す相手によって,自分の全財産が変わるのはありえないから。)
問題を簡単にするため,プレゼントを渡す相手によらず\(p,a\)が一定であるとします。
すると,\(p\)はモテ度を表すことがわかります。
また,\(a\)は,プレゼントを渡す人の人数に比例して増加する変数ということがわかります。
このことを踏まえて,\(Q(n)\)の上下を表にまとめました。
\(Q(n)\)を下げる為に | |
\(n\):全財産 | 増やす |
\(p\):モテ度 | 上げる |
\(a\):プレゼントを渡す人数 | 減らす |
ギャンブラーの最適な賭け金の設定
先ほどは,破産確率\(Q(n)\)を計算して,破産確率をできるだけ少なくする方法を考えました。
続いては,ギャンブラーの最適な賭け金について考えます。
ここで,以下の問題を解いてもらいます。
問題2:
(1) 賭け金を問題1の\(\frac{1}{k}\)培\((kは1より大きい自然数)\)としたとき,\(X\)氏の破産確率\(Q^*(n)\)を求めましょう。(問題1の結果を用いて良い。)
(2) \(Q(n)\)と\(Q^*(n)\)の大小を比較しましょう。
個々のゲームで勝つ確率\(p\)が少ないとき,どのように賭け金を設定すればいいのか考えてもらうのが,この問題の狙いです。
問題2解答例
(1)解答
賭け金が\(\frac{1}{k}\)培することは,最初の資金と目標金額を\(k\)培するのと等価なので,
求める\(Q^*(n)\)は,\(Q(n)\)を\(n \to kn,a \to ka\)に置き換えたものと等しくなります。
\(Q^*(n)=\left \{ \begin{array}{lll}
1-\frac{n}{a},&p=\frac{1}{2} \\
\frac{(\frac{1}{p}-1)^{kn}-(\frac{1}{p}-1)^{ka}}{1-(\frac{1}{p}-1)^{ka}},&p≠\frac{1}{2}
\end{array}\right.\)
<終>
(2)解答
\(Q^*(n)\)と\(Q(n)\)について,大小を比較する為に式変形する。
\(Q(n)= \frac{(\frac{1}{p}-1)^{n}-(\frac{1}{p}-1)^{a}}{1-(\frac{1}{p}-1)^{a}}\)
\(Q(n)= \frac{(\frac{1}{p}-1)^{n-a}-1}{(\frac{1}{p}-1)^{-a}-1}\)
続いて,\(Q^*(n)\)は,
\(Q^*(n)=\frac{(\frac{1}{p}-1)^{kn}-(\frac{1}{p}-1)^{ka}}{1-(\frac{1}{p}-1)^{ka}}\)
\(Q^*(n)= \frac{(\frac{1}{p}-1)^{k(n-a)}-1}{(\frac{1}{p}-1)^{-ka}-1}\)
ここで,等比数列の和の公式を用いて,分子分母を因数分解すると,
\(Q^*(n)= \underbrace{\frac{(\frac{1}{p}-1)^{n-a}-1}{(\frac{1}{p}-1)^{-a}-1}}_{Q(n)}\frac{(\frac{1}{p}-1)^{(n-a)(i-1)}}{\sum_{i=1}^{k}(\frac{1}{p}-1)^{-a(i-1)}}\)
\(Q^*(n)=\frac{(\frac{p}{1-p})^{(a-n)(i-1)}}{\sum_{i=1}^{k}(\frac{p}{1-p})^{a(i-1)}}Q(n)\)
ここで,大小を比較するために,\(\frac{Q^*(n)}{Q(n)}\)を計算すると,
\(\frac{Q^*(n)}{Q(n)}= \frac{(\frac{p}{1-p})^{(a-n)(i-1)}}{\sum_{i=1}^{k}(\frac{p}{1-p})^{a(i-1)}}\)
\(\frac{p}{1-p}>1↔ \frac{1}{2}< p <1 \)のとき,\(\frac{(\frac{p}{1-p})^{a-n}}{(\frac{p}{1-p})^{a}}\)は,
\(\frac{(\frac{p}{1-p})^{a-n}}{(\frac{p}{1-p})^{a}}=(\frac{p}{1-p})^{-n}<1\)
より,
\(\frac{Q^*(n)}{Q(n)}<1\Leftrightarrow Q^*(n)<Q(n)\)
\(\frac{p}{1-p}<1↔ 0< p <\frac{1}{2} \)のとき,\(\frac{\frac{p}{1-p})^{a-n}}{(\frac{p}{1-p})^{a}}\)は, \(\frac{(\frac{p}{1-p})^{a-n}}{(\frac{p}{1-p})^{a}}=(\frac{p}{1-p})^{-n}>1\)
より,
\(\frac{Q^*(n)}{Q(n)}>1 \Leftrightarrow Q^*(n)>Q(n)\)
また,\(p=\frac{1}{2}\)の時は明らかに,\(Q^*(n)=Q(n)\)
実際に,\(Q^*(n)\)と\(Q(n)\)の大小関係は,\(k>1\)のとき,(\(k\)は自然数でなくてもいい。)
1. \(0<p<\frac{1}{2} \Rightarrow Q^*(n)>Q(n) \)
2. \(p=\frac{1}{2} \Rightarrow Q^*(n)=Q(n)\)
3. \(\frac{1}{2}<p<1 \Rightarrow Q^*(n)<Q(n)\)
また,\(k<1\)のときは,(\(k\)は自然数でなくてもいい。)
1. \(0<p<\frac{1}{2} \Rightarrow Q^*(n)<Q(n) \)
2. \(p=\frac{1}{2} \Rightarrow Q^*(n)=Q(n)\)
3. \(\frac{1}{2}<p<1 \Rightarrow Q^*(n)>Q(n)\)
となります。
<終>
プレゼントの最適な賭け金は?
\(g=\frac{1}{k}\)とすると,\(g\)は1人当たりのプレゼントにかける費用に該当することがわかります。
\(Q^*(n)\)を低くするために,モテ度\(p\)で場合分けして,\(g\)をいじっていきましょう。
\(Q^*(n)\)を下げる為に | |
\(0< p <\frac{1}{2} \) | \(g\)を上げる |
\(\frac{1}{2}<p<1 \) | \(g\)を下げる |
つまり,モテ度\(p\)が\(\frac{1}{2}\)未満の人は,1人当たりのプレゼント費用\(g\)を大きくする程\(Q^*(n)\)が小さくなり,\(p\)が\(\frac{1}{2}\)より大きい人は,\(g\)を小さくする程\(Q^*(n)\)が小さくなることがわかります。
クリスマス,バレンタインデーにおける最適戦略は?
問題を2題解いた方はお疲れ様でした。(私もお疲れ様でした。指と頭痛ぇ)
クリスマス,バレンタインデーで,プレゼントを渡す最適な戦略は,表にまとめると,
・モテない人は,1人に高価なプレゼント
・モテる人は,多人数に安い物をプレゼント
また,プレゼントを渡す前に行うことは,
・モテ度を上げる
・自分の財産を増やす
ただし,好きな異性に高価なプレゼントを贈ると,振られたときに結構引きずるので,ご注意ください。(サンクコスト理論より)
最後に
小学校,中学校,高校の教員の方へ,バレンタインデーは,生徒たちにとって,
修学旅行と双璧をなす程重要なイベントなので,生徒間のプレゼントのやりとりには目をつむっていただきたく存じます。
あと,最近,サンクコスト理論を知りました。中星一番さんの中星マインドです。